「6か月以上」と聞いて、うちの子は当てはまるのだろうか、まだ相談するには早いのだろうかと、検索された方も多いと思います。数字を目にすると、お子さんが「分類される」ようで、胸がざわつくこともあるでしょう。

先にお伝えすると、国が示している「ひきこもり」の定義は、支援を考えるための目安です。診断名ではありません。そして、厚生労働省が令和7年1月に公表した資料では、「定義に当てはまるかどうか」や「期間の長さ」で相談の可否を決めない考え方が示されています。この記事では、国の資料で確認できた範囲で、定義の中身と、その読み方を整理します。

なお、ひきこもりの人数は別の記事、原因や、支援の中身、回復の考え方もそれぞれ別の記事で扱います。ここでは「定義」に絞ります。

厚生労働省のガイドラインにある定義

もっともよく引用されるのは、厚生労働省が公開している「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(2010年、平成22年)の定義です。厚生労働科学研究費補助金による研究班がまとめた資料で、厚生労働省のひきこもり関連のページに本文が掲載されています。

ガイドラインは、ひきこもりを次のように定義しています(2-1「ひきこもりの定義」より、一部のみ引用)。

様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。

ここから読み取れることを、順に整理します。

  • 原因を一つに決めていない。 「様々な要因の結果として」とあり、特定の原因を前提にしていません。
  • 「状態」を指す言葉である。 「現象概念」と書かれており、人の性質や病名を示すものではありません。
  • 期間は「原則」の目安。 「原則的には6ヵ月以上」「概ね」と、幅をもたせた書き方です。
  • 外出していてもよい。 他者と交わらない形での外出(たとえば、人と会わずに出かけること)があっても、この定義の範囲として書かれています。

定義の後半には、原則として統合失調症の症状に基づくひきこもり状態とは区別する、という但し書きもあります。これは定義の範囲を整理するための記述で、お子さんに病名をつけるものではありません。

左に国のガイドラインの定義(支援につなぐための目安)、右に「迷っても、相談してかまいません」と書かれたカードが矢印で結ばれた図"“

診断名ではなく、支援のための目安

ガイドラインの冒頭(はじめに)には、次の趣旨の説明があります。ひきこもりは、子どもから成人までの広い年齢層に生じる社会現象を表す用語・概念であり、一つの疾患や障害にのみ現れる症状ととらえるべきではない、というものです。様々な疾患の症状としても、様々な葛藤の徴候としても現れうるため、概念が覆う領域は非常に広く、境界はあいまいにならざるをえないとも書かれています。

そのうえで、「様々な支援を行う際には、より明瞭な境界で区切られた現象像の定義が求められる」ため、定義を置いたと説明されています。つまり、定義は支援を行うために線を引いたものです。

もう一つ、ガイドラインには大切な一文があります。ひきこもり状態にある子どもや青年のすべてが、社会的支援や治療を必要としているわけではない、という点です。たとえば、慢性の身体疾患の療養のために家庭に長くとどまる必要がある場合や、家族も本人もその生き方を受け入れていて支援を必要としていない場合は、「少なくとも当面は支援を要するひきこもり状態とはならない」と書かれています。

この点から、支援が必要な状態かどうかは、家にいる期間の長さだけでは決まらず、本人や家族が困っているか、支援を必要としているかも含めて考えられていることが分かります。

令和7年のハンドブックでは、期間を問わない考え方に

厚生労働省は令和7年1月に「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜」を公表しました。ガイドラインの定義が見直されて置き換わった、という説明は、確認した範囲では見当たりません。ハンドブックのQ&Aでは、ガイドラインとハンドブックは併用することが想定されていると説明されています。

そのうえで、ハンドブックの第2章「ひきこもり支援の対象者と目指す姿」には、支援の対象を広くとらえる考え方が書かれています。ポイントは次のとおりです。

  • 支援の対象者は、社会的に孤立し孤独を感じている状態にある人や、様々な生きづらさを抱えている状態の人で、「その状態にある期間は問いません」とされている。
  • これまで、定義の期間によって支援を受けられる・受けられないという判断がされることがあり、「ひきこもり状態の期間が6か月を過ぎてから改めて相談に来て欲しい」といった言葉を受けて、相談窓口への不信感をもった人もいた、と述べられている。
  • 生きづらさは本人固有のもので、他者がその有無や大小を判断することはできず、感じている期間によって支援の必要性が変わるものではない、とされている。
  • Q&Aでは、支援の対象者を従来よりも広くとらえることで、支援の入口につながりやすくすることを期待していると説明されている。

ここで注意したいのは、ハンドブックは主に支援者向けの資料だということです。どの窓口でも同じ対応になることを約束するものではありません。それでも、国の資料に「期間を理由に相談を遠ざけない」という方向性が明記されていることは、相談をためらっている親御さんにとって、知っておいてよい情報です。

内閣府の調査にある「狭義」「広義」「準ひきこもり」

ニュースや調査報告で目にする「広義のひきこもり」「狭義のひきこもり」「準ひきこもり」は、国の調査のなかで、調査ごとに決めた区分です。ここでは、内閣府が実施し、現在はこども家庭庁のページで公開されている「こども・若者の意識と生活に関する調査」(令和4年度、2022年11月実施、報告書は令和5年3月)で確認できた内容を示します。調査によって定義は異なる可能性があるため、他の年度や他の調査にそのまま当てはめないでください。

この調査(15〜39歳対象、40〜69歳対象)では、「社会的自立に至っているかどうか」に着目して、次のように定義しています。

  1. 「普段どのくらい外出しますか」という質問で、次の4つのいずれかを選んだ人
  2. 趣味の用事のときだけ外出する
  3. 近所のコンビニなどには出かける
  4. 自室からは出るが、家からは出ない
  5. 自室からほとんど出ない
  6. かつ、その状態になってから6か月以上と答えた人
  7. ただし、報告書が定めた3つの類型(特定の疾患が主な理由の人、妊娠・出産・育児・介護や家事を担っていて家族以外とも会話している人、仕事をしている人など)にあてはまる人は除く

この条件に合う人が「広義のひきこもり」です。そのうち、外出状況で「近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からほとんど出ない」を選んだ人が「狭義のひきこもり」、「趣味の用事のときだけ外出する」を選んだ人が「準ひきこもり」とされています。報告書では、狭義と準ひきこもりを合わせたものが広義、と整理されています。

内閣府調査で使われた外出状況の質問の選択肢を並べた図。趣味の用事のときだけ外出、近所のコンビニなどには出かける、自室からは出るが家からは出ない、自室からほとんど出ない"“

報告書の注には、この定義は同一の定義を一律にあてはめた結果であり、実際にはひきこもりの状態にない人が含まれている可能性や、ひきこもりの状態にある人が除かれている可能性がある、と書かれています。区分は調査の集計のための線であり、一人ひとりの状況を判定するものではない、ということです。

同じ調査には、10〜14歳を対象とした「外出頻度の低いこども群」という区分もあります。義務教育年齢のこどもについては、社会的自立に着目した定義を作ることが難しいため、広義の定義を参考にして、外出状況と「6か月以上」で区分したと説明されています。

調査名にも補足があります。こども家庭庁のページには「こども・若者総合調査(令和7年度)」が公表されています。私たちが確認できた概要資料や一部の章では、ここで紹介した「ひきこもり」の区分は見つけられませんでしたが、全文を確認したわけではありません。この記事では、確認できた令和4年度の調査の定義を紹介しています。

「当てはまるか」より、「困っているか」で考える

ここまで見てきたように、国の資料にある定義は、いずれも「目安」です。親御さんが気にしてしまいやすい点を、あらためて整理します。

期間が6か月に満たなくても、相談してかまいません。 ハンドブックは支援の対象を「期間は問わない」とし、「6か月を過ぎてから来てほしい」という言葉を「心ない言葉」と述べています。「6か月」は、ガイドラインや調査が状態をそろえて把握するために置いた目安です。

定義に当てはまらなくても、困りごとを相談してかまいません。 ハンドブックの支援対象の説明は、生きづらさや生活上の困難、交流の少なさ、支援を必要とする状態といった広い言葉で書かれています。お子さんが外出できているかどうか、年齢がいくつか、といった条件は、そこには書かれていません。

外出できていても、悩んでいてよい。 ガイドラインの定義でも、他者と交わらない形での外出はありうるとされています。「コンビニには行けるから大丈夫」「まだ家から出ているから違う」と、ご自身を納得させる必要はありません。

学齢期のお子さんの場合。 ガイドラインは、不登校のなかに、ひきこもりと関連性の強い一群があると考えている、と書いています。ただし、不登校と診断の話は別です。学校に行っていない状態そのものを、ひきこもりと決めつける必要はありません。お子さんがいま安心して過ごせているかどうかに目を向けることのほうが、定義にあてはめるより役に立ちます。

ラベルは、お子さんの価値を決めない。 定義に当てはまったとしても、それは「いまの状態を表す言葉」です。親御さんの育て方や、お子さんの人柄の評価とは関係がありません。

今日できる小さな一歩

  1. 「定義に当てはまるか」の確認を、いったん手放す。 当てはまるかどうかで悩む時間を、お子さんの今日の様子を見る時間にあててください。
  2. 気になることを、2〜3行だけメモする。 「眠れていない」「食事が不規則」「家族と話さなくなった」など、事実だけで十分です。相談するときに状況を伝えやすくなります。
  3. 相談先を一つだけ、調べておく。 後述の窓口のうち、お住まいの地域のひきこもり地域支援センターか、自治体の窓口のページを開いてみてください。電話をするのは、その後でかまいません。

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相談窓口

相談は、定義に当てはまると確認できてからでなくてかまいません。次の窓口は、公式のページで確認できた内容です。電話番号や受付時間は変わることがあるため、かける前に各公式ページでご確認ください。

  • ひきこもり地域支援センター(都道府県・指定都市・一部の市区町村): 厚生労働省のページによると、全ての都道府県と指定都市(67自治体)に設置されており、令和4年度から設置主体が市町村にも広がっています。社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、公認心理師、臨床心理士などの資格を有する「ひきこもり支援コーディネーター」が、ひきこもり状態にある方やその家族の相談に応じると説明されています。所在地や電話番号は、厚生労働省の「ひきこもり地域支援センターの住所・連絡先」の一覧(PDF)で確認できます。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html
  • ひきこもり支援ポータルサイト「ひきこもりVOICE STATION」(厚生労働省): ひきこもりに関する情報をまとめたサイトです。
    https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/
  • よりそいホットライン: 電話番号は0120-279-338(フリーダイヤル)と公式サイトに掲載されています。福島県からかける場合は0120-279-226です。受付時間や対応言語などは、公式サイトでご確認ください。
    https://www.since2011.net/yorisoi/
  • お住まいの自治体の窓口: 学齢期のお子さんは、学校、教育委員会、教育支援センターも相談先になります。成人のお子さんは、自治体の福祉の窓口や保健所・精神保健福祉センターにも相談できます。窓口名は自治体ごとに異なるため、自治体のホームページで「ひきこもり 相談」と検索してみてください。

命に関わる心配があるとき(「死にたい」という言葉が出ている、自傷がある、暴力がある、など)は、一人で抱えずに、すぐにお住まいの地域の救急や警察、医療機関、緊急の相談窓口に連絡してください。

まとめ

国の定義は、「様々な要因の結果として社会的参加を回避し、原則的には6か月以上、概ね家庭にとどまり続けている状態」という、支援や調査のための目安です。診断名ではなく、お子さんの価値や、親御さんの関わり方を評価するものでもありません。令和7年1月の厚生労働省のハンドブックでは、支援の対象を期間を問わず広くとらえる考え方が示されています。定義に当てはまるかどうかを待たず、困っていると感じたときが、相談してよいときです。

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出典

  • 厚生労働省(厚生労働科学研究費補助金 研究班)「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン(本文)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000807675.pdf)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援推進事業(ひきこもり支援ハンドブック掲載ページ)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~(全体版。第2章は 001471258.pdf)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf)
  • 内閣府政策統括官(現・こども家庭庁掲載)「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)報告書 第3部 調査結果の概要Ⅱ 第2章 ひきこもりに関する状況等」(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/85674a4c-22e0-4483-a7fb-83319b266439/4406b2d0/20250305-resources-research-chilren-attitudes_06.pdf)
  • 内閣府政策統括官(現・こども家庭庁掲載)「同 第1部 調査の概要」(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/85674a4c-22e0-4483-a7fb-83319b266439/10a07986/20250305-resources-research-chilren-attitudes_02.pdf)
  • こども家庭庁「こども・若者総合調査(令和7年度) 結果」(https://www.cfa.go.jp/resources/research/kowaka/results)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。