「男の子と女の子では、不登校のなり方に違いがあるのだろうか」。そう気になって、中学生のお子さんのことを調べている方は多いと思います。「うちは女の子だから」「男の子だからこうなのかも」と、性別に理由を探して、苦しくなっている方もいるかもしれません。
先に結論を書きます。この記事を書くにあたり、文部科学省の令和6年度調査(不登校抜粋版)を確認しました。確認した範囲では、不登校の人数や「把握した事実」を男女別に示した表は見つかりませんでした。そのため、性別によって原因や特徴、望ましい対応が違う、という話は、公的な資料からは書けません。ネット上には性別ごとの「なりやすさ」や特徴を語る話もありますが、この記事では扱いません。代わりに、国の調査で確認できる中学校全体の数字と、その読み方を整理します。性別で決めつけず、お子さん一人ひとりを見るための手がかりとして読んでください。親御さんの関わり方や、お子さんの性格が原因だという話ではありません。
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男女別のデータは、確認できた資料にはなかった
文部科学省は毎年、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を行っています。令和6年度の結果をまとめた「不登校抜粋版」には、不登校の人数の推移、学年別の人数、欠席期間別の人数、「不登校児童生徒について把握した事実」、相談・指導を受けた状況などが載っています。これらは、小学校・中学校・合計、または学年別で示されていました。
私たちが取得した抜粋版のPDFの本文には、「男」「女」「性別」の語は出てきませんでした。同じ調査の別の資料に男女別の集計があるかどうかまでは確認できていません。この記事では、確認できなかったことを「ない」と断定せず、「確認できた資料にはなかった」とだけ書きます。
もうひとつ、知っておきたい点があります。仮に調査に男女別の集計があったとしても、それは調査の区分上の話です。世の中には、男女のどちらかに当てはめにくいお子さんもいます。また、全体の傾向と、目の前のお子さん一人の事情は別のものです。傾向がどうであれ、お子さんの状況は、お子さん本人から見える範囲で、ひとつずつ確かめていくしかありません。
令和6年度の、中学校の不登校の状況
性別は分けられませんが、中学校全体の数字は確認できます。いずれも、文部科学省の令和6年度調査(不登校抜粋版)からです。
- 中学校の不登校生徒数は216,266人です。小学校は137,704人、小・中学校の合計は353,970人でした。
- 増加率は、中学校で0.1%(前年度11.4%)でした。前年度と比べて増えた割合は小さくなっています。
- 新規に不登校となった生徒数は、中学校で83,409人(前年度90,853人)で、前年度から減っています。
- 学年別では、中学1年生が58,736人、2年生が77,066人、3年生が80,464人でした。
- 欠席日数が90日以上の生徒は、中学校で131,221人、中学校の不登校生徒に占める割合は60.7%でした。
人数が多い、と感じて不安になる方もいると思います。ただ、これは全国の中学校の数字で、お子さんのこれからを予測するものではありません。「同じ状況の子がいる」ことを知る材料くらいに受け取ってください。
中学校で多く挙がった「把握した事実」
調査では、不登校の児童生徒について、学校が把握した事実を、当てはまるものをすべて選ぶ形(複数回答)で数えています。令和6年度以前に把握したものも含みます。割合は、不登校の生徒数に対するものです。中学校(216,266人)での主な項目は次のとおりです。
| 把握した事実 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった | 65,025人 | 30.1% |
| 不安・抑うつの相談があった | 52,661人 | 24.4% |
| 生活リズムの不調に関する相談があった | 52,510人 | 24.3% |
| 学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた | 33,907人 | 15.7% |
| いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった | 30,395人 | 14.1% |
| 親子の関わり方に関する問題の情報や相談があった | 21,347人 | 9.9% |
| 家庭生活の変化に関する情報や相談があった | 14,261人 | 6.6% |
| 障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった | 13,386人 | 6.2% |
(文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」より。上は一部の項目です。「該当なし」は10,553人(4.9%)でした)
複数回答なので、合計すると、全体の人数を上回ります。1人のお子さんに、いくつもの事実が当てはまることがあるという前提の表です。
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この数字を、性別の話に結びつけないために
この表は、男女で分けた数字ではありません。「やる気が出ない」が30.1%と並んでいても、それが男女のどちらに多いのかは、この表からは分かりません。「友人関係」の14.1%を、「女子に多い」などと読むのも、根拠がありません。
また、この表は「学校にこういう情報や相談があった」という記録です。原因を特定したものではなく、先生方が学校で見聞きした範囲の記録でもあります。文部科学省の通知は、令和6年3月公表の「不登校の要因分析に関する調査研究」に触れ、不登校のきっかけや要因について、児童生徒や保護者の回答と、教師の回答には認識の差が確認されたと述べています。
この研究の概要では、「体調不良」「不安・抑うつ」「居眠り、朝起きられない、夜眠れない」といった心身の不調や生活リズムの不調を、児童生徒や保護者は約7〜8割が回答したのに対し、教師の回答は2割弱でした(調査は4つの地域が対象で、全国の数字ではありません)。学校の記録に出てこない事情が、お子さんにはある可能性があります。
そう考えると、「男の子だから」「女の子だから」と先にラベルを貼ることは、お子さん一人ひとりの事情を見えにくくします。国の通知も、不登校は取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、不登校というだけで問題行動であると受け取られないような配慮が必要だとしています。
「個別に見る」とは、何をすることか
性別という枠を外したとき、見ていくのは、お子さん本人の状況です。ここからは、特定の研究で効果が確かめられた方法ではなく、一般的に言われる関わり方です。これで状況が良くなる、という保証はありません。
- 評価せずに様子を見る: 起きる時間、食事、眠れているか、好きなことに向かえているか。メモするだけで十分です。
- 「どうして」より「今」を聞く: 理由を問い詰めるより、今日の体調や気分を聞くほうが答えやすい場合があります。答えなくてもよい形にしておきます。
- お子さんの言葉をそのまま受け取る: 「男の子なのに」「女の子らしく」といった言い方で、気持ちを整理してしまわない。
- 学校に、学校での様子を聞く: 家での様子と、学校から見えている様子を並べると、手がかりが増えます。
学校外の選択肢や、相談の場もあります。調査研究の概要では、学校がとった対応について、保護者から「スクールカウンセラーまたはスクールソーシャルワーカーなどの専門スタッフとの面談」や「学校内に別室登校できる環境整備」に肯定的な回答が多かった一方、「教育支援センター(適応指導教室)など学校外の教育機関の紹介」は、実施されず残念という回答が多い項目でした(いずれも調査協力4地域での結果です)。学校外の選択肢について、保護者の側から尋ねてみることもできます。
令和6年度調査では、学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けていない不登校の児童生徒のうち、担任等から週1回程度以上の継続的な相談・指導等を受けていた割合が89.0%でした(小・中学校の合計)。担任の先生を含め、学校には相談できる窓口が複数あります。
登校だけを目標にしなくていい
文部科学省の通知には、不登校児童生徒への支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があること、また、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがあること、と書かれています。性別に関係なく、こうした考え方が国の通知の土台にあります。
休むことを手放しで勧めているわけではなく、学業の遅れや進路への影響にも目を向けるよう、同じ通知は求めています。あせって決めなくても、情報を集めながら、お子さんの意思を確かめつつ、できることを少しずつ選んでいく、という進め方で構いません。
今日できる小さな一歩
1つだけで構いません。
- 「男の子だから」「女の子だから」という言葉が頭に浮かんだら、「うちの子の今日の様子は?」と置き換えて、一行だけ書き留める(「昼まで寝ていた」「夕飯は食べた」など)。
- 理由を聞くのを、今日は一度お休みする。代わりに、答えやすい声かけを1つ決めておく。
- 「自分の育て方のせいでは」と責める気持ちが出てきたら、この記事の数字は学校に入った情報の集計であって、親御さんへの評価ではないことを思い出す。
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※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。
相談窓口
番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。
- 学校・教育委員会・教育支援センター: お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせてください。電話番号は自治体ごとに異なるため、市区町村の公式サイトで確認します。
- 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783。全国の児童相談所は、こども家庭庁の一覧(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)で確認できます。
- 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったとき、すぐ近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間受付(年中無休)です。
- ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置。住所・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
- よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。
お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。
まとめ
文部科学省の令和6年度調査(不登校抜粋版)では、男女別の不登校の数字や「把握した事実」の男女別の内訳は確認できませんでした。そのため、性別による原因や特徴の違いを、この記事で述べることはできません。確認できたのは、中学校全体の数字と、それが学校の把握した事実の記録であり、お子さん本人の体験とはずれることがあるという点です。「男の子だから」「女の子だから」と決めつけず、いまのお子さんの様子を、評価を入れずに見ていくことが、出発点のひとつになります。親御さんが悪いということではありません。
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出典
- 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」(https://www.mext.go.jp/content/20251106-mxt_jidou01-000045738_3.pdf)
- 文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm)
- 文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究 結果の概要」(https://www.mext.go.jp/content/20251120-mxt_jidou02-100002768_2.pdf)
- こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
- こども家庭庁「児童相談所一覧」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)
- 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
- 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)
いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。



