「ほっといたほうがいいと言われたけれど、本当に何もしなくていいのだろうか」「何かさせたほうがいいのか。それとも、もうあきらめるしかないのか」。毎日そう考えて、夜になって検索している方は少なくないと思います。

結論から言うと、「ほっとく」か「何かする」かの二択ではありません。見守るとは、口出しを減らしながら、様子を見て、必要なときに選べるものを用意しておくことです。この記事では、文部科学省の通知など公的な資料で確認できる範囲を土台に、言葉の整理から始めます。迷っていること自体が、お子さんを大切に思っている証拠です。親御さんの対応が原因で不登校になる、という話でもありません。

「口出しを減らす」と「目は離さない」の2つの枠を並べた図。口出しを減らすの項目は、休む時間を守る、急かさない。目は離さないの項目は、様子を見る、話したいときに聞く"“

「ほっとく」「見守る」「あきらめ」という言葉を整理する

同じ言葉でも、人によって指している内容が違うことがあります。先に整理しておきます。

  • 「ほっとく」: 周囲から言われるときは、「登校を急かさない」「口出しを減らす」の意味であることが多いようです。一方で、親御さんが受け取るときは「関わることをやめる」「無関心になる」と聞こえて、不安になることがあります。
  • 「見守る」: 関わりをやめることではありません。様子を見ること、お子さんが話したいときに聞けるようにしておくこと、必要になったときに手を差しのべられる状態でいることを含みます。
  • 「あきらめる」: 「この子の将来をあきらめる」ではなく、「今の時点で、登校という結果を目標にすることをいったん手放す」という意味で使われる場合があります。親御さんの気持ちとしては、「疲れて、何もできなくなった」という意味のこともあると思います。

ここでは一般的に言われる整理を書いています。「ほっとく」の意味は、言った人と受け取った人で食い違うことがあります。もし「ほっとけ」と言われて傷ついたなら、その言葉の意味を、言った人に聞いてみても構いません。

「ほっといていい?」を、国の資料で確認する

「何もしなくていいのか」という不安に対して、文部科学省の通知には、次のことが書かれています(令和元年10月25日付「不登校児童生徒への支援の在り方について」、令和6年度調査結果を踏まえた通知)。

  • 不登校児童生徒への支援は、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある。
  • 児童生徒によっては、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある。
  • 一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益、社会的自立へのリスクが存在することにも留意する。
  • 不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るもの。支援に当たっては、不登校児童生徒やその保護者の意思を十分に尊重する。

つまり、登校の有無だけを物差しにしなくてよい、休む時期に意味がある場合もある、と国の文書が示しています。一方で、通知は休むことを手放しで勧めているわけではなく、学業や進路の面に目を向けることも求めています。「何もしない」でも「急いで何とかする」でもなく、その間にあたる見守りが想定されている、と読むのが自然です。

また令和元年の通知には、児童生徒自身を見守りつつ、不登校のきっかけや継続理由に応じて、環境づくりのために適切な支援や働き掛けを行う必要がある、という趣旨の記述があります。ここでの「見守る」は、何もしないことではなく、環境づくりとセットで書かれています。

「何をさせる?」は、「何を選べるか」に言い換える

「何かさせたほうがいいのか」という問いは、親御さんが責任を一人で背負っているときに出てきやすいものだと思います。通知の考え方を借りると、問いを次のように言い換えられます。

「何をさせるか」ではなく、「お子さんが選べるものを、どれだけ用意できるか」。

令和元年の通知には、児童生徒の才能や能力に応じて、本人の希望を尊重した上で、場合によっては教育支援センター、不登校特例校、ICTを活用した学習支援、フリースクール、夜間中学での受入れなど、様々な関係機関等を活用して社会的自立への支援を行うことが書かれています。令和6年度調査を踏まえた通知でも、学校に来られなくてもオンライン等で授業や支援を受けられる環境の整備が進められていると述べられています。

お子さんを中心に、家で休む、オンラインで学ぶ、相談する場所、学校外の居場所、教育支援センター、フリースクールの6つの選択肢が並んだ図"“

親御さんが用意できるのは、たとえば次のようなものです。

  • 情報: お住まいの地域に教育支援センターがあるか、オンラインで受けられる支援があるか。調べるのは親御さんで構いません。
  • 見学の機会: お子さんの意思を確かめたうえで、「見るだけ」の見学ができるか問い合わせる。
  • 学校の中の居場所の情報: COCOLOプランには、学校には行けるけれど自分のクラスには入れないときや、少し気持ちを落ち着かせたいときに使える、空き教室等を活用した「校内教育支援センター」の説明があります。在籍校に、設けているか尋ねる方法があります。
  • 休める環境: 昼夜逆転や睡眠が気になるときも、まず安心して休める場を整える。

用意したものを、お子さんが選ばなくても構いません。「選ばなかった」ことは失敗ではなく、「今はそうしたくない」という意思表示でもあります。選択肢が机の上にあることを、お子さんが知っているだけで意味がある場合もあります(一般的に言われることです)。

見守るとは「様子と困りごとを知ろうとする」こと

令和6年度調査を踏まえた通知は、不登校傾向のある児童生徒に関する支援ニーズを早期に発見すること、そして個々の不登校児童生徒の状況を適切に把握することを学校側に求めています。また同じ通知では、令和6年3月公表の「不登校の要因分析に関する調査研究」で、きっかけや要因について、児童生徒や保護者の回答と教師の回答に認識の差が確認されたことも述べています。

家庭でできる「状況の把握」を、無理のない範囲で書きます。いずれも一般的に言われる関わり方で、これで状況が好転する、という保証はありません。

  • 評価せずに見る: 起きる時間、食事、眠れているか、好きなことに向かえているか。メモするだけで十分です。
  • 「どうして」より「今」を聞く: 理由を問い詰めるより、今日の体調や気分を聞くほうが答えやすい子もいます。答えなくてよい形にしておきます。
  • 話したくなったときに聞く: 向かい合わず、車の中や何かをしながらのほうが話しやすい場合があります。
  • 学校に、学校での様子を聞く: 家での様子と、学校から見えている様子を並べると、手がかりが増えます。

「話してくれない」ことが続いても、見守りが失敗しているわけではありません。話さない時期は、本人なりに整理している時間かもしれません。

「あきらめたい」ほど疲れたときに

「もう何をしても無駄な気がする」。そう感じる日があっても、責められることではありません。通知でも、不登校児童生徒の保護者に対する相談支援体制を整えることが重要だとされています。保護者の側にも支えが必要だと、国の文書が位置づけているということです。令和元年の通知には、保護者が気軽に相談できる体制を整えることが重要である、という趣旨の記述もあります。

疲れたときに、次のように考えてみる方法があります。

  • 「あきらめる」のは、お子さんではなく、「今日の目標」だけにする。 今日は登校の話をしない、でも十分です。
  • 親御さん自身の休みを、見守りの一部として数える。 親御さんが休めないと、見守る余裕もなくなります。
  • ひとりで抱えない。 学校や教育委員会、教育支援センター、親向けの窓口に話すことは、お子さんをあきらめることではなく、親御さんが倒れないための手段です。

睡眠がとれない、食事がのどを通らない、何も手につかない状態が続くときは、かかりつけの医療機関や、お住まいの地域の保健の窓口にも相談してください。この記事では診断や治療には触れません。

今日できる小さな一歩

1つだけで構いません。

  1. 「お住まいの市区町村名 教育支援センター」で検索し、教育委員会のページを開く。連絡先をメモするだけで十分です。
  2. お子さんの今日の様子を、評価を入れずに一行だけ書き留める(「朝は起きた」「昼まで寝ていた」など)。
  3. 親御さん自身が今日休めることを1つ決める。入浴の時間を長めにとる、など小さなことで構いません。

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※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。

相談窓口

番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。

  • 教育支援センター・教育委員会: お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせてください。電話番号は自治体ごとに異なるため、市区町村の公式サイトで確認します。
  • 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783。全国の児童相談所は、こども家庭庁の一覧(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)で確認できます。
  • 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったとき、すぐ近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間受付(年中無休)です。
  • ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置。住所・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

「ほっとく」は無関心ではなく、口出しを減らすという意味で使われることがあります。見守るとは、様子を知ろうとしながら、お子さんが選べるものを用意しておくことです。文部科学省の通知は、支援の目標を登校という結果のみに置かず、休養に意味がある場合もあるとしています。親御さんが疲れたときは、お子さんをあきらめるのではなく、今日の目標を小さくして、ひとりで抱えない先を探してみてください。

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出典

  • 文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm)
  • 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm)
  • 文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」令和5年3月(https://www.mext.go.jp/content/20230418-mxt_jidou02-000028870-cc.pdf)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
  • こども家庭庁「児童相談所一覧」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。