「何がきっかけだったのか、まったく見当がつかない」。聞いても「わからない」と返ってきて、ひとりで考え込んでいる方は少なくないと思います。

結論から言うと、原因がわからなくても、親御さんにできることはあります。文部科学省の通知も、支援の目標を「学校に登校する」という結果だけに置いていません。この記事では、公的な資料で確認できる範囲で、原因がはっきりしないことの意味と、今日からできる関わり方を整理します。親御さんが原因ではありませんし、原因を突き止めるまで動けないわけでもありません。

お子さんを中心に、人間関係・学習・心や体の疲れ・生活リズムが重なり合うことを示した図。理由は1つとは限らないことを表している"“

原因がはっきりしないのは、よくあることです

文部科学省は、不登校について「取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るもの」と捉え、不登校というだけで問題行動と受け取られないよう配慮が必要だとしています(令和6年度調査結果を踏まえた対応の通知)。ご家庭の育て方や、親御さんの対応だけで決まるものとは書かれていません。

きっかけについても、国の調査で見えてきたことがあります。文部科学省委託事業の「不登校の要因分析に関する調査研究」(令和6年3月公表)は、教師、児童生徒本人、保護者の回答を比べています。その結果の概要には、次のような内容があります。

  • 「学業の不振」「宿題の提出」は、三者の回答が比較的近かった。
  • 「いじめ被害」や教職員とのやりとりなどは、教師と児童生徒・保護者で回答の割合に違いがあった。
  • 「体調不良」「不安・抑うつ」「居眠り、朝起きられない、夜眠れない」といった心身の不調や生活リズムの乱れは、児童生徒や保護者は約7〜8割が回答したのに対し、教師の回答は2割弱だった。

同じ状況でも、見ている人によって「きっかけ」の見え方が違う場合があるということです。学校の先生から見えている理由と、お子さんが感じている理由、親御さんが家で見ている様子は、一致しないことがあります。

さらに同じ調査では、教師の回答で、象徴的なきっかけが見当たらない場合に、主な要因として「無気力・不安」が選ばれやすい可能性が示唆されています。はっきりした出来事が外から見えにくいことがある、ということです。

学校・本人・保護者で見え方が違うのですから、親御さんが聞いても答えが見えてこないことがあっても、不思議ではありません。

理由探しを急がなくていい理由

「原因がわからないと対処できない」と感じるのは自然なことです。一方で、文部科学省の通知には、原因の特定を待たずに考えてよいことが書かれています。

  • 支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて社会的に自立することを目指す必要がある。
  • 不登校の時期が、休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある。

(いずれも令和6年度調査結果を踏まえた対応の通知)

通知は同じ文で、学業の遅れや進路選択上の不利益といったリスクにも留意するよう述べています。休むことを手放しで勧めているわけではありません。ただ、今の時期を「休養」として受け止めてよいと、国の文書が示しているのは確かです。

また、令和元年の通知(不登校児童生徒への支援の在り方について)では、要因や背景を把握する役割として、学級担任だけでなく、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによるアセスメント(見立て)が有効だとされています。要因の把握は、親御さんがひとりで担う仕事ではなく、学校や関係機関と一緒に進めるものだという位置づけです。

問い詰めずに、様子を見るときのポイント

原因がわからないとき、つい「どうして行けないの」と聞いてしまうことがあります。責める気持ちがなくても、お子さんには「理由を答えなければいけない」と重く伝わる場合があります。次のような関わり方もあります。

  • 理由ではなく、今の状態を聞く。 「しんどい?」「眠れてる?」と、今日の体調や気分に絞る。答えなくてもよい形にしておく。
  • 事実を静かに見る。 朝起きられるか、食事はとれているか、好きなことに向かえているか。評価をつけず、メモするだけでよい。
  • 話したくなったときに聞く。 夜や、車の中、何かをしながらなど、向かい合わない場面のほうが話しやすい子もいます。
  • 「わからない」を受け止める。 返事が「わからない」でも、それも本当の答えのひとつです。そのまま受け取って、話を終えて構いません。

親御さん自身の睡眠や食事も、同じように大切です。ご自分を責める時間が長くなっているときは、先に相談先につながることをおすすめします。

原因が分からないときの考え方を3段階で示した図。理由は分からなくても大丈夫、まず休めているか安心できているかを見る、必要なら相談先とつながる、の順に進む"“

学校や関係機関に相談するときのコツ

原因を調べる役割を、学校や関係機関に分けてもらう方法があります。

  • 学校に、見えている様子を尋ねる。 先に挙げた調査のとおり、学校で見えている姿と家での姿は違うことがあります。先生から見たお子さんの様子を聞き、家での様子と並べると、手がかりが増えます。
  • スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーにつないでもらう。 担任の先生に話しにくいときは、学校にこの2つの職種との面談を相談できます。COCOLOプランには、スクールソーシャルワーカーは福祉・医療的な支援が必要な場合に福祉の窓口につないだり、手続きの補助をしたりする役割だと説明されています。
  • 教育支援センターに保護者として相談する。 通知では、教育支援センターに、家から出ることができない児童生徒へのアウトリーチ支援や、保護者への相談支援の機能が望まれるとされています。お子さんが外に出られなくても、親御さんだけで相談できる可能性があります。設置の有無は地域で異なるため、市区町村の教育委員会に確認してください。

体調や気分の面で心配なことがあるときは、かかりつけの医療機関にも相談してください。この記事では、診断や治療の判断には踏み込みません。

今日できる小さな一歩

1つで十分です。

  1. お子さんに「理由は言わなくていいよ。今日はどんな感じ?」と、一言だけ声をかける。返事がなくても構いません。
  2. お子さんの今日の様子を、評価を入れずに一行だけ書き留める(「朝は起きた」「昼まで寝ていた」など)。学校や相談先に話すときの材料になります。
  3. 親御さん自身のために、相談先の連絡先を1つだけスマホに登録しておく。かけるのは後でも構いません。

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※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。

相談窓口

番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。

  • 教育支援センター・教育委員会: お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせてください。電話番号は自治体ごとに異なるため、市区町村の公式サイトで確認します。
  • 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783。全国の児童相談所は、こども家庭庁の一覧(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)で確認できます。
  • 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったとき、すぐ近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間受付(年中無休)です。
  • ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置。住所・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

原因がわからないのは、親御さんの落ち度ではありません。見ている人によってきっかけの見え方が違うことは国の調査でも示されていて、不登校の時期には休養の意味がある場合もあると、文部科学省は述べています。原因を突き止めることより、お子さんが安心して過ごせているか、親御さんがひとりで抱えていないかを、今日の目安にしてみてください。

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出典

  • 文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm)
  • 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm)
  • 文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究 結果の概要」令和6年3月公表(https://www.mext.go.jp/content/20251120-mxt_jidou02-100002768_2.pdf)
  • 文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」令和5年3月(https://www.mext.go.jp/content/20230418-mxt_jidou02-000028870-cc.pdf)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
  • こども家庭庁「児童相談所一覧」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。