「私の育て方が悪かったのだろうか」「あのとき、こう言わなければよかった」。子どもが学校に行けなくなってから、頭のなかで同じ場面を何度も巻き戻している方は、少なくないと思います。夜になると特にひどくなり、スマホで検索しているうちに、気持ちが重くなってしまうこともあるでしょう。

先に結論を書きます。文部科学省は、不登校を「取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るもの」と位置づけています。親御さんの育て方だけで決まる、とは書かれていません。この記事では、国の文書で確認できる範囲で、自分を責めてしまう気持ちとの付き合い方を整理します。後半では、母親だけで背負わないための考え方と、親御さん自身を休ませる方法をお伝えします。

親・ご家族を中心に、お父さん、祖父母・きょうだい、学校・教育委員会、教育支援センター、保護者の会、相談窓口が円状につながり、支え合うことを示した図"“

自分を責めてしまうのは、ごく自然な反応です

子どもが苦しんでいるとき、いちばん近くにいる親は、「何かできたのではないか」と考えます。これは、お子さんを大切に思っているからこそ起きる反応です。ご自分の落ち度を示すものではありません。

ただ、責める気持ちが強くなるときは、周りからの言葉が重なっていることも多いものです。「母親が甘やかしたから」「もっと厳しくすれば」といった言葉をかけられたり、そう言われた気がしたりして、振り返りが「責める作業」になってしまうことがあります。

振り返ること自体は悪いことではありません。けれども、「誰のせいか」を決める問いは、答えが出ないまま親御さんをすり減らします。次の章で、国の文書がこの点をどう書いているかを確認します。

国の文書は、不登校をどう捉えているか

文部科学省は、令和6年度の調査結果を踏まえた通知(令和7年度に発出)で、学校や教育委員会に向けて次の趣旨を示しています。

  • 不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉えること。
  • 不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう、配慮が必要であること。
  • 支援にあたっては、不登校の児童生徒やその保護者の意思を十分に尊重すること。
  • 支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にせず、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指すこと。

「どの児童生徒にも起こり得る」という言葉は、特定の家庭や、特定の親に限った話ではない、ということです。また、保護者の意思を尊重することが明記されています。学校や教育委員会は、親御さんを責める立場ではなく、一緒に考える立場に置かれています。

同じ通知には、不登校の時期が、休養や自分を見つめ直す意味を持つことがある、という点も書かれています。一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益にも留意するよう、同じ文のなかで述べられています。休むことを手放しで勧めているわけではなく、両方を見たうえで支援を考える、という書き方です。

調査の「親子の関わり方」は、家庭が原因という意味ではありません

文部科学省の調査には、「親子の関わり方に関する問題の情報や相談があった」という項目があります。これを見て、ドキッとした方もいるかもしれません。

この項目は、不登校の児童生徒について、学校が把握した事実を選ぶ設問のひとつです。この項目は、「長期欠席者の状況」で「不登校」と回答した児童生徒全員について、当てはまるものをすべて回答する形で選ばれています。つまり、学校に「そういう情報や相談があった」という記録です。学校が保護者との面談や連絡のなかで聞いた内容が、記録されている場合もあります。

この数字だけで、親子の関わり方が不登校の原因だと言うことはできません。

母親だけが背負わなくていい

不登校の相談の場では、母親が窓口になることが多いかもしれません。けれども、お子さんを支えるのは母親ひとりの役割ではありません。

文部科学省の令和元年の通知(不登校児童生徒への支援の在り方について)は、「家庭教育は全ての教育の出発点」としたうえで、保護者の個々の状況に応じた働きかけが重要だと述べています。同じ通知は、保護者と課題意識を共有して一緒に取り組む信頼関係をつくること、保護者が気軽に相談できる体制を整えることを、学校や教育委員会に求めています。保護者の側が一人で頑張ることを前提にした文書ではありません。

家庭の中でできる分担の考え方を、いくつか挙げます。あくまで一例で、ご家庭の事情に合わせて変えて構いません。

  • 父親やパートナーに、状況を共有する。 「どうしたらいい?」と相談するより、「今日の様子はこうだった」と事実を短く伝えるほうが、始めやすいことがあります。
  • 学校や相談先とのやりとりを、交代で担う。 連絡のたびに母親だけが気を張る状態を、少しでも減らします。
  • 祖父母や親戚には、助言ではなく「話を聞いてもらうこと」を頼む。 助言が負担になるときは、「アドバイスはいらなくて、聞いてほしい」と先に伝えておく方法があります。
  • 同じ立場の保護者とつながる。 文部科学省のCOCOLOプランには、「一人で悩みを抱え込まないよう保護者を支援」することが掲げられ、教育支援センターや保護者の会などの情報を分かりやすく提供する、と書かれています。令和6年度の通知にも、民間団体として保護者の会が挙げられています。

ご家庭の事情で、父親やパートナーの協力が得にくい場合もあると思います。その場合は、家族に頼れないご自分を責めず、学校・教育委員会・相談窓口など、家の外の支えを先に使ってください。

親御さん自身を休ませることも、お子さんの支えになります

不登校の支援で、親御さんの疲れは後回しにされがちです。けれども、親御さんが疲れ切っていると、お子さんに向き合う余裕もなくなります。休むことは、わがままではありません。

親自身を大切にする4つの習慣として、休む、食べる、話す、頼るの4つを並べた図"“

大きなことをする必要はありません。次のような小さなことから、1つ選んでみてください。

  • 休む。 家事の手を1つ止める、早めに布団に入る、5分だけ何もしない時間をつくる。
  • 食べる。 食事を抜いていたら、温かい飲み物と何か一口だけ。
  • 話す。 評価されずに聞いてもらえる相手に、気持ちを声に出す。相手が身近にいなければ、電話や相談窓口でも構いません。
  • 頼る。 「やらなければならないこと」を1つ、誰かに預ける。

ご自分を責める気持ちが長く続いて、眠れない日が続く、食欲がない、何も楽しめないといった状態になっているときは、かかりつけの医療機関や、地域の保健・医療の窓口にも相談してください。この記事では、診断や治療の判断には踏み込みません。

責める気持ちが出てきたときの、言い換えの例

気持ちを無理に消そうとしなくて構いません。出てきたときに、少しだけ言葉を置き換える方法があります。

浮かびやすい考え 置き換えの例
私の育て方が悪かった 国の通知は、不登校はどの児童生徒にも起こり得るとしている。私だけの問題ではない
もっと早く気づけばよかった 気づけなかったことも、今こうして調べていることも、事実。今できる一歩を探している
ほかの家は普通にできているのに 学校から見えることと、家庭や本人が感じることは、ずれることがある。他の家庭の内側は分からない
自分がしっかりしないと 一人で背負わない先を探すのも、親としての大切な役割

置き換えは、「そう思わなければいけない」というものではありません。しんどい日は、しんどいままで大丈夫です。

今日できる小さな一歩

1つだけで構いません。

  1. 「私のせいではない」と思えないままでも、今日は1回だけ、「自分を責めている時間が長かったな」と気づくだけにする。気づいたら、温かい飲み物を1杯入れる。
  2. 家族の誰か1人に、お子さんの今日の様子を一行だけ伝える。評価や相談ではなく、事実だけで構いません。
  3. 相談先の連絡先を1つ、スマホに登録しておく。かけるのは後でも構いません。

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相談窓口

番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。

  • 教育支援センター・教育委員会: お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせてください。電話番号は自治体ごとに異なるため、市区町村の公式サイトで確認します。
  • 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783。全国の児童相談所は、こども家庭庁の一覧(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)で確認できます。
  • 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったとき、すぐ近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間受付(年中無休)です。
  • ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置。住所・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

不登校は、国の通知で「どの児童生徒にも起こり得るもの」とされています。親御さんの育て方だけで決まると読める記述は、確認した文書にはありませんでした。調査の「親子の関わり方」の項目も、学校が把握した事実の記録であって、家庭が原因だという意味ではありません。母親だけが背負う必要はなく、家族や学校、地域の窓口、同じ立場の保護者と分け合ってよいものです。まずは今日、ご自分を休ませる時間を5分だけ、確保してみてください。

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出典

  • 文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm)
  • 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」(https://www.mext.go.jp/content/20251106-mxt_jidou01-000045738_3.pdf)
  • 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm)
  • 文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」令和5年3月(https://www.mext.go.jp/content/20230418-mxt_jidou02-000028870-cc.pdf)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
  • こども家庭庁「児童相談所一覧」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。