お子さんが家にいる時間が長くなると、「家のほかに、安心して過ごせる場所はないのだろうか」と考える方は多いと思います。調べてみると「居場所」と名のつく場がたくさん出てきて、どれが何なのか、本当にうちの子に合うのか、分からなくなるかもしれません。
この記事では、「居場所」が国の資料でどのように位置づけられているかを、厚生労働省の公式資料で確認できた範囲だけで整理します。特定の居場所や団体、オンラインサービスをおすすめする記事ではありません。また、居場所に行けば状況が変わる、という話でもありません。国の資料も、居場所に行くことを一律の目標にはしていません。
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公的資料は「居場所」をどう説明しているか
厚生労働省の「ひきこもり支援ハンドブック」(第4章)には、居場所についての説明があります。居場所は、自宅(自室)以外で、本人にとって安心や安全を感じることのできる、基地のような場所だとされています。本人の安全基地であり、自宅以外に出られる場所、という意味合いです。共感の得られる場、応答のある場であることも大切だと書かれています。
ここで注目したいのは、「安心や安全を感じられること」が居場所の中心に置かれている点です。何かを達成する場所、訓練を受ける場所、とは書かれていません。
同じ箇所には、居場所のあり方は多様で、居場所に求めることも人によって様々だ、という説明もあります。何もすることが決まっていない居場所を求める人もいれば、何か目的を持って取り組むことのある居場所を求める人もいる、とされています。
「本人が望む」ことが前提とされています
ハンドブックは、支援する側の都合で既存の居場所に本人を当てはめないようにすることが重要だ、と述べています。本人が望む居場所はどのような居場所か、丁寧に本人の意向を確認しながらつなげることを大切にしましょう、という書き方です。
さらに、本人が居場所を必要としない場合には、居場所支援が逆効果になる場合もあることに留意しましょう、とも書かれています。
つまり国の資料では、居場所は「通わせるもの」ではなく、本人が望むなら選べる選択肢のひとつです。ご家族が良かれと思って探した居場所に、お子さんが関心を示さなくても、それは珍しいことでも、ご家族のせいでもありません。資料の考え方からすれば、居場所を望まない状態も、そのまま尊重される対象です。
また、ハンドブックには、支援の最初の目標が人によって違うことも書かれています。就労や就学を最初の目標とすることもあれば、居場所につながることを目指すこともあり、別の支援機関につながることや、本人と支援者がつながり続けることを目指す場合もある、という内容です。居場所は、そのうちのひとつの形として挙げられています。
ここまでの内容は、「居場所に通えば状況が好転する」といった根拠を示すものではありません。確認できるのは、どんな場を、どんな考え方で整えようとしているか、という国の方針です。
居場所づくりは、どんな事業として位置づけられているか
居場所は、制度の面でも位置づけがあります。厚生労働省の「ひきこもり支援に関する取組」のページによると、国は、ひきこもり当事者やご家族がより身近なところで相談でき、必要な支援が受けられる環境づくりを目指して、市区町村における相談窓口の設置や居場所づくり、関係者間のネットワーク構築、当事者会・家族会の開催などを進めています。これらに必要な経費を、「ひきこもり支援推進事業」によって地方自治体に補助している、と説明されています。
事業は、主に次の3つで構成されています。
- ひきこもり地域支援センター事業: 都道府県・指定都市に置かれ、平成30年4月までにすべての都道府県・指定都市(67自治体)に設置されました。ハンドブックの関係機関一覧では、センターが相談支援のほか、居場所づくり事業、連絡協議会・ネットワークづくり事業、当事者会・家族会開催事業などを実施するとされています
- ひきこもり支援ステーション事業: 相談支援、居場所づくり、連絡協議会・ネットワークづくりを必須事業とする事業です。令和7年度は129自治体が実施しています
- ひきこもりサポート事業: 8つのメニューから自治体が任意に選んで実施する事業で、令和7年度は164自治体です。8つのメニューのひとつが居場所づくりで、ページには「ひきこもり状態にある方やその家族が安心して過ごせる居場所づくり」と書かれています
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ここで押さえておきたいのは、これらの数字は事業に取り組んでいる自治体の数だということです。お住まいの市町村に居場所があるとは限りません。居場所づくりは、市町村が選んで実施するメニューにも含まれています。地域ごとに、あるところもあれば、ないところもあります。
また、居場所は自治体の事業としてだけでなく、民間の団体や家族会などが運営しているものもあります。ハンドブックには、安心して安全を感じられる居場所がない場合は、必要に応じて居場所を新たに作る取組も必要になる、そのために関係機関や家族会などと連携しながら、居場所を継続的に設置していくための体制を作ることが必要だ、という記載があります。居場所が地域に十分にそろっているとは限らない、という前提で書かれていると読めます。
ひきこもりVOICE STATIONでの扱い
厚生労働省のひきこもり支援ポータルサイト「ひきこもりVOICE STATION」の「全国の相談窓口」のページには、ひきこもり地域支援センターの説明があります。それによると、すべての都道府県・指定都市にある、行政が運営するひきこもりに特化した相談窓口で、NPO法人などに委託しているケースもあります。支援コーディネーターが、電話や来所等による相談支援を行うほか、同じ悩みを持つ方が集まる居場所を提供している、とされています。ご家族への相談支援なども行うとあります。
同じページでは、センターが窓口となって必要な支援を行う際の連携先として、保健所・保健センター、精神保健福祉センター、自立相談支援機関などと並べて、居場所づくり、当事者会、家族会が挙げられています。居場所は、センターの連携先のひとつとして挙げられています。
「全国の相談窓口」には、お住まいの地域の支援機関を探すためのページがあります。居場所を探すときも、まずここで地域のセンターや窓口を調べ、「居場所の情報はありますか」と聞くのが、公式の資料で確認できる範囲での入口です。
VOICE STATIONには、当事者や経験者の声を紹介する記事も載っています。たとえば、居場所に関する記事やオンラインの当事者会に参加した体験記のタイトルが並んでいます。ただし、これらは個人の体験を紹介するもので、誰にでも当てはまる効果を示すものではありません。この記事では、タイトルを確認した以上のことは書きません。
生活困窮者自立支援制度のなかの居場所
生活困窮者自立支援制度の関連資料にも、「居場所」という言葉は出てきます。厚生労働省の「生活困窮者自立支援制度」のページでは、各事業の概要のうち「子どもの学習・生活支援事業」の説明のなかに、仲間と出会い活動ができる居場所づくりが挙がっています。
ただし、この事業の説明は子どもの学習支援や進学に関する支援などを含むもので、ひきこもり状態にある方一般を対象に居場所を設ける、という書き方ではありません。対象や内容は、お住まいの地域の自立相談支援機関に確認する必要があります。
同じ制度の「就労準備支援事業」は、社会との関わりに不安がある方などに、原則1年のプログラムで一般就労に向けた基礎能力を養う事業と説明されています。これは居場所とは別の性格の支援で、「働くこと」に向けた内容です。居場所と混同しないようにしておくと、選ぶときに迷いにくくなります。
自立相談支援機関については、令和元年6月14日付の厚生労働省の通知で、ひきこもりの状態にある方やその家族からの相談を受けとめるよう示されています(詳しくはサイト内の「ひきこもり支援の種類と相談先」の記事も参考にしてください)。居場所について知りたいときも、自立相談支援機関に聞いてよい窓口のひとつです。
オンラインの居場所・オンライン相談は、公式資料でどう扱われているか
「外に出るのが難しいなら、オンラインの居場所はどうだろう」と考える方もいると思います。今回確認した公式資料の範囲で、書いてあることと、確認できなかったことを分けて書きます。
確認できたこと
- ハンドブックには、相談を受けやすい環境づくりとして、来所、電話、訪問、メール、オンライン会議ツール、SNS等の利用など、様々な相談方法を工夫することが書かれています
- 自治体のなかには、LINEなどのSNSを用いた相談窓口を開設し、ひきこもり相談にLINEで対応する地域が増えてきた、とあります。ビデオ通話で会話しながら行う場合も、文字だけで行う場合もある、との説明です
- 同じ箇所には、文字でのやり取りは表情や様子が見えないため記載内容に注意が必要なこと、音声や動画を使うときは周りへの音もれや情報漏洩に注意が必要なことも書かれています。これは支援する側に向けた注意ですが、ご家族も、自宅でオンラインを利用する際の参考にできます
- ハンドブックには、ひきこもり状態の家族がいる「兄弟姉妹の会」もオンラインで開催されている、という記載があります
確認できなかったこと
- 「オンラインの居場所」が、公的な事業として定義されているかどうかは、今回確認した資料では分かりませんでした
- オンラインの居場所を利用した場合の効果についての記載も、確認できませんでした
- 特定のオンラインサービスやアプリを国が推奨している、という記載も確認できていません
ですから、この記事では、オンラインの居場所が公的に認められた特定の仕組みであるとは言えません。利用を考える場合は、運営者の情報、参加条件、個人情報の扱い、費用などを、ご自身で確かめることになります。
利用の流れと費用は、実施主体ごとに違います
居場所への参加の流れや費用について、全国共通のルールは、今回確認した公式資料には載っていませんでした。居場所の運営主体は、市町村、ひきこもり地域支援センター、委託を受けた団体、民間団体、家族会など様々で、そのぶん参加の仕方も違うはずです。
ハンドブックの事例の欄には、札幌市のひきこもり地域支援センターと民間団体が協働で運営する「居場所」の例が載っています。そこでは、居場所の機能に加えて、相談窓口としての機能や、同じ立場の人が学び合う機能を持たせていると説明されています。このように、居場所は「ただ集まる場所」から「相談や学びも兼ねる場」まで、取組によって幅があります。
そのため、事前に次のような点を、運営している窓口に聞いてみることが大切です。
- 誰が運営しているか(自治体か、委託先か、民間団体か)
- 対象はだれか(本人か、家族か、年代や地域の条件はあるか)
- 事前の申込みや面談は必要か
- 費用はかかるか、かかるならいくらか
- 見学だけ、あるいは途中で帰ることはできるか
- 本人が行かなくても、ご家族だけで相談できるか
費用については、この記事で確認できた公式資料には記載がありません。「無料のはず」と考えずに、窓口で確認してください。
「近くの居場所」が合わない場合も、資料は想定しています
ハンドブックには、本人や家族が「身近な地域だからこそ外に出られない」「地域の人に知られたくない」と感じることも多いため、身近な地域の活動場所ではなく、あえて少し離れた地域の居場所や相談機関を利用することも検討していく必要がある、と書かれています。
近所の居場所に行きたくない、という気持ちは、資料のなかでも想定されている、ごく自然なものです。ご家族がそれを気にしすぎる必要はありません。また、社会とのつながり方には、居場所以外にも、家族との会話、趣味の活動、相談など、様々な形があります。ハンドブック第2章でも、インターネット上のみで交流している場合や、自分の趣味や興味のある活動には参加している場合もある、と書かれています。居場所だけが答えではありません。
今日できる小さな一歩
- お子さんに居場所の話をする前に、ご家族だけで情報を集めてみてください。ひきこもりVOICE STATIONの「全国の相談窓口」で、お住まいの地域のひきこもり地域支援センターを探し、連絡先をメモします。連絡はまだしなくて大丈夫です。
- 連絡する場合は、「家族だけで相談したい」「この地域で居場所の情報はあるか、費用や参加の流れはどうなっているか」と聞いてみてください。
- お子さんには、居場所の情報を押しつけず、「こういう場所もあるらしい」と伝えるかどうかも含めて、お子さんの様子を見ながら決めてください。ハンドブックの考え方では、選ぶのは本人です。
ひとりで抱え込まず、話してみませんか
- 1回30分・無料
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不登校支援の専門カウンセラーが、お話を伺います。1回30分まで無料です。
※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。
相談窓口
電話番号は自治体ごとに異なるため、公式の一覧から探してください。
- ひきこもり地域支援センター(都道府県・指定都市): 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から連絡先一覧(PDF)を確認できます。
- ひきこもりVOICE STATION: https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp の「全国の相談窓口」から、お近くの支援機関を探せます。
- 自立相談支援機関: 令和7年度の窓口情報は、厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html)からたどれます。
- お住まいの市町村: 「市町村名 ひきこもり 相談」で検索するか、福祉担当課に、居場所の事業があるか尋ねてください。
自傷や「死にたい」といった言葉があるとき、暴力や虐待が疑われるときは、すぐに相談してください。お子さんが18歳未満で虐待が疑われるときは、児童相談所虐待対応ダイヤル189に連絡してください(番号は厚生労働省・こども家庭庁の公式ページで最新の案内を確認してください)。
まとめ
国の資料で、居場所は、自宅以外で本人が安心や安全を感じられる、基地のような場所と説明されています。何もすることが決まっていない居場所もあれば、目的を持って取り組む居場所もあり、支援者の都合で当てはめないこと、本人の意向を確認すること、居場所を必要としない人には逆効果になる場合もあることが明記されています。居場所は、ひきこもり支援推進事業のなかの、市町村やセンターが取り組む事業のひとつです。ただし、地域によって有無も中身も違い、利用の流れや費用は運営主体ごとに確認する必要があります。オンラインの居場所については、公式資料から確認できる情報が限られていました。まず、ご家族が地域の窓口に聞いてみることからで十分です。居場所に行くかどうかは、お子さんのペースで決めることです。
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出典
- 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
- 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜」第4章「ひきこもり支援のポイント」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471260.pdf)
- 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜」表紙・目次・Q&A(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471239.pdf)
- 厚生労働省「ひきこもりVOICE STATION」「全国の相談窓口」(https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/support/)
- 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜」第2章「ひきこもり支援の対象者と目指す姿」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471258.pdf)
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html)
- 厚生労働省「ひきこもり地域支援センターによる生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関への積極的な支援について(令和元年6月14日 社援地発0614第2号)」(https://www.mhlw.go.jp/content/000518570.pdf)
いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。



