「何と声をかければいいのか分からない」「話しかけて、かえって傷つけたらどうしよう」。お子さんが部屋にいる時間が長くなると、毎日の一言ひとことに迷う方は多いと思います。調べるほど、「こうすべき」「これはしてはいけない」という情報に出会い、余計に動けなくなることもあるでしょう。

先に結論を書きます。厚生労働省の「ひきこもり支援ハンドブック」などを確認した範囲では、「この言葉をかければよい」という決まった声かけは示されていませんでした。書かれているのは、関わり方の考え方です。本人を無理に動かそうとしないこと、家の中を本人が安心して過ごせる場所にしていくこと、そして、ご家族自身も休み、相談してよいこと。この3点が中心です。

この記事では、公的資料に書かれている内容と、書かれていない内容を分けて整理します。診断や治療、医療の判断には踏み込みません。

家の絵を中心に、「本人のペース」「家族の休息」「家族だけの相談」の3つの吹き出しが囲んでいる図"“

この記事で確認した範囲と、確認できなかった範囲

使った資料は、厚生労働省が令和7年1月に公表した「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜」(本文とQ&A)と、厚生労働省のサイトに掲載されている2010年の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」です。どちらも主に、相談を受ける支援者に向けて書かれた資料です。ご家族向けの育児書のような「家庭での接し方マニュアル」ではありません。

そのため、次のことは区別してお伝えします。

  • 公的資料に書かれていること: 「ハンドブックでは…とされている」と書きます。
  • 公的資料に書かれていないこと: 「一般に言われること」と明記し、断定しません。

たとえば、食事の時間、生活リズムの整え方、会話の回数といった具体的な目安は、今回確認したハンドブック本文とガイドラインの本文には見つかりませんでした。ハンドブックのQ&Aも、ポイントは全員に一律に当てはめるものではなく、本人や家族の状況に応じて一人ひとりに合わせる必要がある、と説明しています。お子さんの様子は百人百様です。この記事の内容も、そのまま当てはめるものではなく、考えるときの材料として読んでください。

家族は「本人を動かす人」ではなく、生活を支える存在

ハンドブックの第3章には、家族についての考え方が書かれています。家族は本人にとって一番身近な存在であることが多く、生活を支えながら本人の思いを受け止めることで、本人への支援に大きな影響を与える存在だとされています。

同時に、ご家族の気持ちにも触れています。ご家族は「ひきこもり状態をすぐに解決してほしい」「就労し自立してほしい」といった迅速な改善を求めることがあること、実際の支援の過程では家族も本人の思いを理解していく時間が必要であること、支援は非常に長期に及ぶことが書かれています。焦りを抱くこと自体は、否定されていません。

そのうえで、ハンドブックのコラム「家族支援と家族会」には、次の趣旨の記述があります。家族が焦る気持ちから本人を叱咤激励し、無理に外へ連れ出そうとしても、状況が改善することはない。一方で、家の中で本人が過ごしやすい、安全・安心な環境を整えることで、本人の気持ちや家族への対応が変わることがある。

ここから読み取れるのは、ご家族の役割が「本人を外に出す」ことではなく、「家の中を安心できる場所にしていく」ことに置かれている、という点です。

もう一つ、大切なことがあります。ハンドブックには、ひきこもり状態の自立支援をうたう一部の民間事業者について、「高額な請求を行う」「無理矢理家から連れ出し入所させる」といった事例があったと書かれています。厚生労働省は、悪質な事業者に家族が相談することのないよう、ひきこもり地域支援センターなどの相談窓口や関係機関の周知と、日頃の丁寧な相談支援を各窓口に求めています。焦る気持ちが強いときほど、「すぐに外へ出してくれる」という話は魅力的に聞こえるかもしれません。そうした話を目にしたときは、契約の前に、公的な窓口にも相談してみてください。

親を責める見方には立たない

ガイドラインの家族支援の項には、親が自分の育て方を後悔したり、自分を責めたりしやすいことが書かれています。そして、家族の対応とひきこもりを直線的に結びつける「親原因論」的な決めつけは有害であり、利益をもたらさない、と述べられています。また、親は罪悪感によってお子さんを支えることはできない、とも書かれています。

ハンドブックの第3章でも、本人は「人として尊厳ある存在」であり、ひきこもらざるを得なかった背景を理解していれば、相談に来た家族のこれまでの関わりを責める対応にはならないはずだ、と書かれています。

家庭の中の関わり方を考えるのは、過去を責めるためではありません。今日からできることを、ご家族が落ち着いて考えるためです。

本人のペースと意思を尊重する

変化を決めるのは本人

ハンドブックには、本人が変化を望まない場合の対応も書かれています。変化するかどうかを決めるのは本人であり、支援者や家族といった周りから急かされて変化するものではない、という考え方です。

また、本人は「変化しないといけない」という考えにとらわれている場合があり、その場合は「急いで変化する必要はない」と伝えることが大切だとされています。変化を望まない理由が、自責感や絶望感、支援への嫌悪感であることも多いため、「変わりたくない」という言葉だけを受け取らず、その背景に配慮することも書かれています。

家族と本人の考えは、同じとは限らない

ハンドブックは、本人と家族が感じている課題や意向は、同じようでいて全く異なることがある、と指摘しています。ご家族が心配していることと、お子さんが苦しいと感じていることが、ずれている場合があるということです。

さらに、本人と家族のあいだで意向やペースが違うときは、本人の意向を最優先に考えつつ、その家庭にとって何が最善かを考える、とされています。両親のあいだ、きょうだいのあいだで、考えやペースが違うこともあります。それも珍しいことではない、と書かれています。

「できていること」に目を向ける

ハンドブックには、ひきこもり状態でも本人ができていることを認めること、家族が本人との関わり方を工夫している点に気づいて一つひとつ評価していくことが、大きな力になると書かれています。「スモールステップ」として少しずつ進める、という考え方です。

ガイドラインにも、ひきこもりの経過を段階に分けた表があります。その中の「ひきこもり段階」では、支援者の対応として、焦らずに見守る、性急な社会復帰の要求は避ける、家族の不安を支える、といったことが書かれています。この表は支援者の対応を示したものですが、ご家族が焦りと向き合うときの参考にもなります。

「本人の気持ちを聞く」「安心できる家」「親も相談してよい」の3枚のカードが並んでいる図"“

家の中での関わり 公的資料に書かれていること

ここからは、家庭での関わりについて、資料に書かれている範囲を整理します。

日常の会話ができる関係を目指す

ハンドブックには、支援者が家族を通して本人の意向を確認する場面のポイントとして、まずは家族と本人が日常会話をできるような関係を目指す、という記述があります。意向の確認は、そのうえで徐々に行う、とされています。

また、家族が相談に行くことを本人に伝える場面では、「支援機関に相談しようと思っている」と伝えたうえで、本人に拒否があるかを確認するとされています。本人に拒否がある場合は、本人が家の中で良い状態で過ごせるよう、家族と交流できるよう、引き続き家族を通じた働きかけを行う、と書かれています。

反応がなくても、押しつけない形で

「本人に会えない場合」のポイントには、次のような趣旨の記述があります。

  • やみくもに働きかけても状況が良くなることは考えにくい。
  • 家族を通した関わりは、本人にとって負担になることがあり、支援を押しつけたり、本人が安心している居場所を乱したりしないよう留意する。
  • 本人の反応がなくても、家族が本人の状況を理解したうえで働きかけを続けることで、本人との緊張関係がやわらぎ、本人の言動が変わることがある。
  • 家族が本人と話す機会に、本人のことが心配で、家族が学ぶために相談に行った、と伝えてもらうこともよい。家族が変わることを通じて、相談窓口への安心感や信頼が生まれる、とされている。

これらは、支援者が家族に協力を依頼するときの考え方として書かれたものです。それでも、「反応がなくても働きかけを続ける」と「押しつけない」が同じページに並んでいることが、参考になります。

ガイドラインにも、家族が相談に行ったことを本人に伝えるかどうかは、ケース・バイ・ケースだと書かれています。可能なら事前に知らせるのがよい。ただし、家族がその決意をできないときに無理強いすべきではない。また、本人が納得する魔法の言葉があるわけではなく、家族自身の言葉で、相談に行ったことやそこで感じたことを語ることが大切だ、という内容です。家族への暴力や支配が激しい場合は、知らせずに時期を待つことも大切だとされています。

具体的な声かけ・食事・生活リズムについて

ここは、慎重にお伝えします。

ハンドブック本文とガイドライン本文には、「こう声をかける」「食事はこうする」「生活リズムはこう整える」「会話はこの頻度で」といった、家庭向けの具体的な指示は確認できませんでした。

ハンドブックの第5章の「仮想事例」には、相談員が家族に「挨拶や食事の準備、声かけはいつも通り行ってほしい」と伝える場面が出てきます。ただし、これは体調の不安など個別の事情がある一事例の中での助言で、すべての家庭にあてはまる指示として書かれたものではありません。

一般に言われることとして、家族向けの解説では、問い詰めない、責めない、否定しない、生活の中で挨拶などの短いやりとりを続ける、といった関わり方が紹介されることがあります。これらは、今回確認した公的資料の本文で、家庭向けの方法として示されていたものではありません。お子さんによっては、声をかけられること自体が負担になることもあるでしょう。迷ったときは、次の章にある相談の場で、お子さんの様子を伝えながら一緒に考えるのが確実です。

家族自身の休息と相談

家族が疲れるのは自然なこと

ハンドブックは、長期にわたる支援のなかで進展がほとんど見られず、家族が疲弊したり、焦りや葛藤を抱いたりすることが少なくない、と書いています。そして、本人は家族や支援者の焦りや不安を感じ取ると、支援を受けること自体がプレッシャーとなり、疲れてしまう場合がある、とも述べています。

この点を読んで、「自分の焦りがいけないのだ」と受け取る必要はありません。ハンドブックは、焦りを責めてはいません。焦りは出てくるものとしたうえで、家族が自分を責めるのではなく、頑張っているお子さんを認められるように、「いま出来ていること、頑張っていること」に目を向けて一緒に探していく支援が大切だと説明しています。

家族だけで相談できる

ハンドブックには、本人よりも先に家族が相談に来ることが多く、家族への支援から先に行う場合や、家族への支援のみを行う場合もある、と書かれています。さらに、本人と直接会えなくても、家族への長期間の支援を通じて、家族と本人の関わり方への理解が深まり、親子の関係が良い方向に変わることで、本人が支援につながることもある、とされています。家族への支援のみであっても、支援を続けることが重要だと書かれています。

ガイドラインでは、家族への面談の目的として、ひきこもりの子どもを持つ親の苦悩が受け止められること、親が共同支援者としての冷静さと意欲をもてるようになることなどが挙げられています。また、面談で大切なのは、養育の失敗や責任を探すことではなく、何が起きているのか、今どうすべきかを落ち着いて考えられるように支えることだ、と書かれています。

初回の相談では、ここに至るまでのご家族の努力や苦労を聞き、これまで取り組んできたことをねぎらうことが大切だ、という記述もハンドブックにあります。相談は、評価される場ではありません。

休むことも、関わりの一部

ご家族が休んでよいかどうか、という問いに直接答える記述は、確認した範囲では見つかりませんでした。ただ、ガイドラインの経過の表には、ひきこもりの開始期にあたる時期は、本人には休養が、家族やその他の関係者には余裕が必要な時期とされています。ご家族に余裕が必要だという考え方は、資料の中で一貫しています。

相談先で話す、同じ立場の人の話を聞くなど、ご家族自身が支えられる場をもつことは、ご家族のためであり、家の中の空気を少し落ち着かせることにもつながると考えられます。家族会については別の記事で詳しく扱います。

きょうだいについても、一言だけ書いておきます。ハンドブックには、きょうだいにはそれぞれの人生があり、自分の生活を犠牲にしてまで本人への支援を続ける必要はない、という記述があります。親御さんだけでなく、家族の誰もが、自分の生活を守ってよいということです。

緊急のときは、公的な窓口へ

暴力、自傷・自殺行為、連絡がつかず安全が確認できない、食事や睡眠などの日常生活が維持できず明らかに体調が悪化している。こうした状況は、ハンドブックでも緊急対応を考える場面として挙げられています。その場合は、本人の意向よりも安全を優先して介入を考えるとされ、警察、救急、保健所などへの連絡を検討する、と書かれています。

家庭内の暴力がある場合の対応は、別の記事で詳しく扱います。ここでは、ご家族だけで抱えず、すぐに公的な窓口に連絡してよい、ということだけお伝えします。

今日できる小さな一歩

  1. 今日のお子さんの「できていること」を一つ書き出す。 部屋から出てきた、返事があった、食事をとった、など小さなことで構いません。ハンドブックが挙げる「できていることを認める」の練習になります。
  2. 「どう声をかけるか」の正解探しを、今日はお休みにする。 迷う気持ちはそのままにして、ご家族自身が相談できる窓口を一つ調べてみてください。連絡は、まだしなくて大丈夫です。
  3. ご家族自身が休む時間を、少しだけとる。 15分でも、お茶を飲む時間でも構いません。ご家族に余裕があることは、資料でも大切にされています。

ひとりで抱え込まず、話してみませんか

  • 1回30分・無料
  • オンライン・電話
  • 入力は2分ほど

不登校支援の専門カウンセラーが、お話を伺います。1回30分まで無料です。

無料で相談する

※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。

相談窓口

電話番号や受付時間は変わることがあるため、かける前に公式ページで確認してください。

  • ひきこもり地域支援センター(都道府県・指定都市など): 厚生労働省のページによると、すべての都道府県と指定都市(67自治体)に設置されており、社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、公認心理師、臨床心理士などの資格を有するひきこもり支援コーディネーターが、ひきこもりの状態にある方やその家族の相談に応じるとされています。連絡先は厚生労働省の「ひきこもり支援に関する取組」のページから探せます。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html
  • ひきこもりVOICE STATION(厚生労働省のポータルサイト): 「全国の相談窓口」からお近くの支援機関を探せます。https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/
  • よりそいホットライン: 0120-279-338(フリーダイヤル)。福島県からかける場合は0120-279-226と公式サイトに掲載されています。受付時間などは公式サイトで確認してください。https://www.since2011.net/yorisoi/
  • お住まいの市町村の窓口: 「市町村名 ひきこもり 相談」で検索するか、福祉担当課に問い合わせてください。学齢期のお子さんの場合は、学校や教育委員会も相談先になります。

自分や他人を傷つけるおそれがあるときや、命に関わる状況のときは、一人で抱えず、警察(110)や救急(119)、お住まいの地域の緊急の相談窓口にすぐ連絡してください。お子さんが18歳未満で虐待が疑われるときは、児童相談所虐待対応ダイヤル189(全国共通、通話料無料、匿名可。こども家庭庁の案内による。https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)に連絡してください。

まとめ

厚生労働省のハンドブックなどを確認した範囲では、ひきこもりの子への家族の関わり方について、決まった声かけや生活面の手順は示されていませんでした。示されていたのは、本人のペースと意思を尊重すること、無理に連れ出そうとせず、家の中を安心できる場所にしていくこと、親の関わりを責める見方に立たないこと、そして、ご家族だけでも相談してよく、ご家族自身にも余裕が必要だということです。

「正しい関わり方」を一人で探し続けなくて構いません。お子さんの様子を話せる相手を一人もつことが、今日からできる関わりの一部になります。

ひとりで抱え込まず、話してみませんか

  • 1回30分・無料
  • オンライン・電話
  • 入力は2分ほど

不登校支援の専門カウンセラーが、お話を伺います。1回30分まで無料です。

無料で相談する

※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。

出典

  • 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~」全体版(第3章・第4章・Q&A。https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf)
  • 厚生労働省(厚生労働科学研究費補助金 研究班)「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン(本文)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000807675.pdf)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • 厚生労働省「ひきこもりVOICE STATION」(https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。