「勉強が止まったままで大丈夫だろうか」「塾に通えば、また学べるようになるのかな」。そんな気持ちで検索している方も多いと思います。一方で、本人は休みたいのに、親だけが焦っているように感じて、自分を責めてしまう方もいます。
先に結論を書きます。塾は、学習を再開する手段のひとつです。通うかどうか、いつ始めるか、始めないか。どれも選べます。国の資料でも、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す意味を持つことがあると書かれています。この記事では、文部科学省の資料で確認できる範囲で、塾や学習支援の位置づけ、種類、費用の目安、見学や体験で見たい点を整理します。特定の塾をすすめたり、比べたりはしません。
学習を再開するかどうかは、先に決めなくていい
文部科学省の2019年(令和元年)10月25日の通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」(元文科初第698号)は、不登校の児童生徒への支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にしない、としています。子どもが自分の進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す、という考え方です。
同じ文の中で、この通知は二つのことを並べて書いています。ひとつは、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある、ということ。もうひとつは、学業の遅れや進路選択上の不利益などに留意する、ということです。どちらか一方だけが正しい、という書き方ではありません。
この二つを並べて読むと、親にできることは「やらせる」ことではなく、「選べる状態を用意しておく」ことだと整理できます。いま学ぶ気力がなければ、休む。少し興味が戻ってきたら、選べる手段を机に並べておく。塾は、その並べる手段のひとつです。
つまずきの理由もさまざまです。同じ通知には、学業のつまずきから学校へ通うことが苦痛になり、学業の不振が不登校のきっかけの一つになっている場合がある、とも書かれています。勉強が分からなくなったことが重荷になっていた子には、学び直しの場が助けになることがあります。ただし、そうでない子も多く、塾が合うかどうかは個人差が大きいと考えてください。
塾や学習支援は、公的な資料でどう位置づけられているか
塾そのものを取り上げた国の通知は、今回の調査では確認できませんでした。確認できたのは、「学校の外の施設」や「民間施設」全般についての考え方です。ここでは、その範囲で整理します。
通知で確認できること
先ほどの2019年の通知には、教育支援センター、不登校特例校、ICTを活用した学習支援、フリースクールなど、さまざまな関係機関を活用して支援を行うこと、という趣旨の記載があります。また、民間施設やNPO等と積極的に連携し、相互に協力・補完することの意義は大きい、とも書かれています。
学校の外で学んでいる場合の扱いについても、記載があります。教育支援センターや民間施設などで指導を受けているとき、在籍する学校がその学習の状況を把握することは、学習支援や進路指導の上で重要だとされています。学校が把握した学習の計画や内容が、その学校の教育課程に照らして適切だと判断されたときは、評価を指導要録に記入したり、通知表などで本人・保護者・施設に伝えたりすることが、本人の学習意欲に応え、自立を支援する上で意義が大きい、とされています。
つまり、学校の外で学んでいることを、学校に伝えておく意味はあります。ただし、これは学習の評価についての話で、塾に通っていれば自動的に何かが認められるという意味ではありません。
「民間施設についてのガイドライン(試案)」は目安
通知の別添には「民間施設についてのガイドライン(試案)」があります。ガイドライン自身が、個々の施設の適否を評価するものではなく、保護者や学校、教育委員会が留意する点を目安として示したものだと説明しています。民間施設は性格も規模も活動内容もさまざまで、判断の指針を一律に示すのは難しい、とも書かれています。
このガイドラインは、不登校の児童生徒に対する相談・指導を主たる目的とする施設を前提にした項目を含んでいます。一般の学習塾がこのガイドラインの対象にあたるのかどうかは、資料からは読み取れませんでした。そのため、「塾はこのガイドラインを満たしているか」といった形で使うものではありません。ただ、施設を見るときの視点としては参考になります。項目は、あとの「見学・体験で見たいこと」でまとめます。
出席扱いの制度は、民間施設も対象になり得る
学校の外で学んだ日数を、指導要録上の出席扱いにできる制度があります。文部科学省の資料(義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の取扱い)では、次の点が確認できます。
- 出席扱いにするかどうかは、校長が判断する。民間施設での相談・指導が個々の児童生徒にとって適切かどうかは、校長が設置者である教育委員会と十分に連携して判断する
- 施設は、原則として教育委員会などが設置する教育支援センター等の公的機関とされている。ただし、公的機関での指導の機会が得られない、または通うことが困難な場合で、本人や保護者の希望もあり適切と判断されるときは、民間の相談・指導施設も考慮されてよい
- 通所または入所して相談・指導を受ける場合が前提とされている
- 保護者と学校の間に十分な連携・協力関係があることが、要件のひとつになっている
- 現在登校を希望しているかどうかにかかわらず、本人が自ら登校を希望した際に円滑に学校へ戻れるよう、個別指導等の適切な支援が行われていると評価できること、という要件の文言がある
最後の要件は、制度上の判断条件として書かれたものです。ご家庭に登校を求める趣旨ではなく、いま登校を希望しているかどうかは問わない、と明記されています。
自宅でICT等を使って学ぶ場合は、別の資料があります。教育委員会、学校、学校外の公的機関、民間事業者が提供するICT等を活用した学習が対象になり得ますが、訪問等による対面指導が適切に行われることが前提です。また、出席扱いと判断しなかった例として、無料のインターネット学習プログラムを使っていたが、学習のねらいや内容が明確でなかったケースが挙げられています。文部科学省は一律の基準を示しておらず、学校や教育委員会が判断する、という整理です。
ここで大事なことを一つ書きます。一般の学習塾に通えば出席扱いになる、とは資料からは言えません。出席扱いを考えるなら、通い始める前に、在籍校の先生か教育委員会に「この施設に通う場合、扱いはどうなるか」を聞いておくほうが安全です。出席扱いにならなくても、学ぶことの価値が変わるわけではありません。
塾の種類と、一般に言われていること
塾や学習支援の形は、いくつかに分けて考えられます。下の表現は「一般に言われる」特徴で、公的な資料で種類ごとの特徴が確認できたわけではありません。お子さんによって、向き不向きは大きく違います。
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- 集団型: 教室で複数人が一緒に授業を受ける形。ほかの人の目や、教室という空間が負担になる子もいれば、同じ場にいることが励みになる子もいる、と言われます。
- 個別型: 先生と1対1、または少人数で進む形。本人の理解に合わせて進めやすい、と言われます。人との距離が近いので、相性が出やすい面もあります。
- オンライン型: 自宅から画面を通して受ける形。通う負担が少ない一方、画面越しのやり取りが合うかどうかは人によって違います。顔を出さずに参加できるか、質問をどう受け付けているかは、施設ごとに違います。
- 家庭教師・訪問型: 自宅で、あるいは決まった場所で個別に教わる形。環境は整えやすい一方、家に人が来ること自体が負担になる場合もあります。
- 通信教育・教材型: 教材を使って自分のペースで進める形。始めやすい反面、続けるには本人の気力が要ります。
このほかに、自治体の教育支援センターがあります。2019年の通知は、不登校の児童生徒の無償の学習機会を確保する場として、教育支援センターの設置や整備が望まれる、としています。通える範囲にあるかどうかは自治体によって違うので、教育委員会に確認してください。
費用は、公的調査でどこまで分かるか
費用は大きな判断材料です。ただ、不登校の子に限った塾の費用を示す公的な調査は、今回確認できませんでした。そこで、文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」で分かる範囲を、前提つきで書きます。
この調査は、公立・私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校(全日制)の子どもを持つ保護者を対象にしています。調査実施学校は1,603校、対象の子どもは53,025人です。不登校の子に限った調査ではなく、塾の種類(集団・個別・オンラインなど)別の集計もありません。「学習塾費」には、入会金、授業料(月謝)、講習会費、教材費、模擬テスト代、交通費などが含まれます。また、家庭教師や通信教育は「通信教育・家庭教師費」という別の区分です。
年額の平均は、次のとおりです。
| 区分 | 学習塾費(年額の平均、通っていない子を含む) | 学習塾費に1円以上支出した家庭の年額の平均 |
|---|---|---|
| 公立中学校 | 約23万円 | 約34万9千円 |
| 公立高等学校(全日制) | 約14万7千円 | 約38万1千円 |
ここで見落としたくないのは、学習塾費がゼロ円の家庭も多いことです。同じ調査で、公立中学校では学習塾費が0円の家庭が34.0%、公立高等学校(全日制)では61.4%でした。つまり、塾に通わない、あるいは費用をかけない家庭は少なくありません。
家庭教師や通信教育の費用(通信教育・家庭教師費)も見ておきます。公立中学校では、0円の家庭が72.7%でした。支出している家庭に限った年額の平均は、約7万8千円です。
これらは調査対象全体の平均や分布であり、お子さんが通う塾の費用の目安にはなりません。地域、学年、通う頻度、季節講習の有無で大きく変わります。実際の費用は、見学や体験のときに、入会金・月額・教材費・講習費・やめるときの費用を、書面で確認するのが確実です。
見学・体験で見たいこと
見学や体験は、通うと決める前の「確かめる場」です。見た結果、通わないと決めてもかまいません。
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国のガイドライン(試案)が挙げる項目を、見る視点として借りる
先ほどのガイドライン(試案)には、民間施設を見るときの目安がまとめられています。そのうち、塾を見るときにも参考にしやすいものを挙げます。繰り返しになりますが、一般の学習塾が対象かどうかは確認できていないため、「判定表」ではなく「視点」として使ってください。
- 入会金、授業料(月額・年額等)などの費用が明確にされ、保護者に情報提供されているか
- 指導内容・方法、相談の手法、体制があらかじめ示されているか
- 学習支援や進路の状況について、保護者に情報提供があるか
- 体罰などの不適切な指導や人権侵害がないか
- 施設での指導の経過を保護者に定期的に連絡するなど、家庭との間で連携が保たれているか
- 学校との間で、必要な情報を交換するなど連携が保たれているか(本人のプライバシーに配慮した上で)
一般に言われる、確かめておきたい点
次の点は、公的な資料で確認したものではなく、一般に言われることです。
- 本人のペースに合うか: 通う日数や時間を、本人の状態に合わせて決められるか。遅刻や欠席を前提にしてくれるか
- 休めるか、やめられるか: 休会や退会の条件、やめるときの費用、返金のルール。やめにくい仕組みは、あとで親子の負担になりやすい
- 本人が見て、どう感じたか: 見学は、できれば本人の意思を確かめてから。行きたくなければ、親だけの見学や資料請求、オンラインの説明でも十分です
- 不登校の子への対応の経験があるか: ただし、「経験がある」という言葉だけでなく、具体的にどんな配慮をしているかを聞く
- 成績や進路の話をどう扱うか: 結果を言い切る説明や、急いで決めるよう迫る説明には、いったん立ち止まって考える
体験授業は、短い時間から、あるいは一度だけで終わらせてもいい、と考えておくと気が楽です。体験に行けなかったこと自体は、失敗ではありません。
学習を再開しない選択も、休む選択も、同じように大切
塾を調べていると、「早く決めないと」と思いやすくなります。でも、国の通知が示している目標は、登校や学習の再開そのものではなく、本人が自分の進路を主体的に捉え、社会的に自立することでした。休養に意味があることも、同じ通知に書かれています。
学習を再開しない時期があっても、それは「何もしていない」ことではありません。眠る、食べる、好きなことをして過ごす。それが、次の一歩の土台になることがあります。逆に、少し学んでみたくなったら、塾だけでなく、教育支援センター、オンライン教材、本やゲームの中の学び、家族と話すことなど、手段はたくさんあります。
始めてからも、合わないと感じたら休んだりやめたりしていい。やめることは失敗ではなく、「今は合わなかった」という情報が増えた、ということです。
今日できる小さな一歩
- お子さんに、勉強や塾の話を「聞いてみる」より先に、「いま、どんなことなら気が楽?」と軽く尋ねてみる。答えがなくてもかまいません
- 在籍校か教育委員会に、「学校の外で学ぶ場合の扱い(出席扱いなど)は、どうなっているか」を一度だけ聞いてみる
- 気になる塾があれば、見学の前に、資料やホームページで費用の説明と、休会・退会の条件を確認する
ひとりで抱え込まず、話してみませんか
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相談窓口
番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。
- 学校・教育委員会・教育支援センター: お住まいの市区町村、または都道府県の教育委員会に問い合わせてください。出席扱いの取扱いや、教育支援センターの有無は自治体と学校によって異なります。電話番号は自治体ごとに違うため、公式サイトで確認します。
- 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783。虐待の相談以外にも、子どもの福祉に関するさまざまな相談を受け付けています(こども家庭庁: https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial )。
- 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったとき、すぐ近くの児童相談所につながります。通話料無料です(同上)。
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間受付(年中無休)です(こども家庭庁の上記ページに掲載)。
- ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置されています。連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html )から確認できます。
- よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。受付時間などは公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/ )で確認してください。
お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。
まとめ
塾は、学習を再開する手段のひとつで、通う・通わない・休む、どれも選べます。国の通知は、不登校の時期に休養の意味があることと、学業の遅れや進路選択上の不利益に留意することの両方を挙げています。民間施設での学びが出席扱いになるかどうかは、校長が教育委員会と連携して判断するもので、一般の学習塾が対象になるかは資料からは確認できませんでした。費用は、調査対象全体の平均が出ているだけで、不登校の子に限った目安はありません。見学や体験では、費用の説明、本人のペース、休める・やめられること、学校や家庭との連携を、落ち着いて確かめてください。急がなくて大丈夫です。迷ったら、ひとりで抱え込まずに、相談してください。
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出典
- 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日 元文科初第698号(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm)
- 文部科学省「義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」(別記1)(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155_00004.htm)
- 文部科学省「不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」(別記2)(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155_00005.htm)
- 文部科学省「民間施設についてのガイドライン(試案)」(別添3)(https://www.mext.go.jp/content/1422155_004_2.pdf)
- 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/mext_00002.html)
- こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
- 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
- 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)
いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。



