「朝から頑張って行っている子もいるのに」「うちの子だけ休めて、きょうだいは我慢している」。ふとそう思ってしまい、そう思った自分に落ち込んでいる方がいるかもしれません。反対に、親族や近所、学校の保護者から「ずるい」と言われて、言い返せないまま眠れなくなっている方もいると思います。

結論から言うと、「ずるい」という言葉は、不登校の状態を表す言葉としては当たっていません。同時に、そう思ってしまう気持ちが湧くこと自体は、親御さんの落ち度ではありません。この記事では、「自分の中に浮かんだとき」と「周りから言われたとき」を分けて、公的な情報をもとに整理します。

「ずるい」という言葉が出てくる2つの場面を並べた図。左は自分の中で思うとき、右は周りから言われたとき。どちらも気持ちが揺れるのは自然なことと示している"“

国の通知は、不登校をどう捉えているか

まず、文部科学省の考え方を確認します。令和7年10月の通知(令和6年度の調査結果を踏まえた対応の充実について)には、次の趣旨が書かれています。

  • 不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉える。
  • 不登校というだけで問題行動であると受け取られないような配慮が必要である。
  • 支援にあたっては、不登校の児童生徒やその保護者の意思を十分に尊重する。
  • 不登校の時期が、休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある。

最後の点には続きがあります。同じ文の中で、学業の遅れや進路選択上の不利益、社会的自立へのリスクがあることにも留意するよう述べられています。休むことを手放しで勧めているのではなく、休養の意味と、気をつけたい点の両方を示している、という読み方になります。

つまり国の基本的な見方は、「楽をしている」「得をしている」という見方とは別のところにあります。不登校は、特定の家庭や子どもだけに起きる特別なことではなく、誰にでも起こり得るものとして扱われています。

数字でも、そのことは見えます。令和6年度の調査では、小・中学校の不登校の児童生徒は353,970人で、1,000人当たり38.6人でした(文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」)。ひとつの家庭の中だけの出来事ではありません。

自分が「ずるい」と思ってしまうとき

まず、気持ちのほうから書きます。

「ずるい」と感じる背景には、いくつかの形があると考えられます。以下は出典のある事実ではなく、一般的にそう語られることが多い、という整理です。

  • 親自身が、つらくても頑張って学校や職場に通ってきた。その経験と、今の子どもの姿を比べてしまう。
  • 毎朝、他の家の子が登校する姿を見る。自分の家だけ時間が止まっているように感じる。
  • 家での対応、学校との連絡、仕事の調整で、親の負担が大きい。「こんなに大変なのに」という思いが、行き場を探している。
  • きょうだいが我慢して通っているのを見ていて、不公平だと感じる。

どれも、頑張ってきた人、家族を大事にしている人ほど出やすい気持ちです。「ずるい」という言葉は、実際には「自分も休みたかった」「自分も報われたい」「誰か分かってほしい」といった、別の気持ちの表れであることがあります。

ここで大事にしたいのは、気持ちと見方を分けて考えることです。ふっと湧いた気持ちは、湧いたというだけで、責める必要はありません。一方で、お子さんの状態をそう見る必要もありません。「そう思ってしまった」と気づいたときは、「それだけ疲れているのかもしれない」と受け止める程度で十分です。

お子さん本人に向かって「ずるい」という言葉がこぼれてしまった場合も、同じです。後から「あの言い方はしたくなかった」と伝えれば、それで足ります。完璧な対応を目指さなくて大丈夫です。

きょうだいがいるときの気持ち

きょうだいがいる家庭では、さらに複雑になります。きょうだいから「お兄ちゃんだけずるい」と言われることもあれば、親のほうが「下の子には我慢させているのに」と感じることもあります。

一般的に言われることですが、きょうだいは、親の手が不登校の子に向いている間、自分の気持ちを後回しにしやすいと言われます。親の負担を察して、言わずに我慢している場合もあります。

そのため、次のような小さな工夫が考えられます。

  • きょうだいだけの時間を、10分でも取る。内容は、話を聞くだけでも、一緒におやつを食べるだけでもよい。
  • 「休んでいる子」と「通っている子」を比べる言い方を避け、それぞれ別の事情として話す。
  • きょうだいが「ずるい」と言ったときは、言葉を正す前に、「そう感じるんだね」と一度受ける。

きょうだいの言葉を、「間違い」と退けなくて構いません。「ずるい」の裏には、「自分も見てほしい」という気持ちが隠れていることがある、と言われるためです。ただし、これらはあくまで一般的な考え方であり、お子さんの年齢や家庭の事情によって合う形は違います。

周りから「ずるい」と言われたとき

次に、周囲から言われた場合です。親族の集まりで、近所の立ち話で、学校の保護者同士の会話の中で。突然言われると、頭が真っ白になりますし、後から何度も思い返してしまうものです。

まず、言われた内容は、国の考え方とは一致していません。先に述べたとおり、国の通知は、不登校を問題行動として受け取らないよう配慮を求め、休養に積極的な意味があることもあると示しています。相手の言葉が、お子さんや親御さんの状況を正確に表しているわけではありません。

同時に、言った相手を敵と見なす必要もありません。相手は、不登校の実情をあまり知らないだけかもしれません。ご自身も大変な状況にあって、つい口に出たのかもしれません。以下は出典のない一般的な考え方ですが、「相手を変えること」より「自分の守り方を決めること」に力を使うほうが、親御さんの消耗は少なくなると言われます。

周りから言われたときの4つの選択肢。全部は説明しなくていい、距離をとってもいい、短い返事を決めておく、話せる人に話す、という4つのカードを並べた図"“

全部は説明しなくていい

家庭の事情を、相手が納得するまで説明する義務はありません。説明すればするほど、細部に反論が返ってきて、疲れてしまうことがあります。説明する相手と、しない相手を分けることも、一般に勧められる考え方です。

距離を取ってもいい

その人と会う頻度や、会話の長さを調整するのも選択肢です。親族の集まりを短時間にする、近所での立ち話を挨拶までにする、学校の保護者の集まりは必要な連絡だけにとどめる、といった形です。関係を断つ必要はなく、「今は少し間を空ける」くらいの調整で足ります。

短い返事を決めておく

その場で言い返そうとすると、気持ちが揺れて余計に疲れます。あらかじめ、「そうですか」「ご心配ありがとうございます」「家で話し合っていますので」といった短い返事を、ひとつ決めておく方法があります。同意でも反論でもない返事なので、会話を広げずに済みます。これも一般に紹介される方法で、合うかどうかは人によって違います。

話せる人に話す

言われた言葉を一人で抱えると、何度も頭の中で再生されます。信頼できる家族、友人、同じ立場の親、相談窓口など、話せる相手に一度出すだけでも、重さが変わることがあります。身近な人に話しにくいときは、後ろの「相談窓口」にある電話や、イッテGO!の無料相談も使えます。

学校の関係者の言動が気になるとき

言ったのが学校の教職員だった場合は、少し事情が違います。国の通知は、保護者への相談支援が重要であることを示しており、学校や教育委員会は不登校の相談を受ける立場にあります。担任への相談がつらいときは、スクールカウンセラーや教育委員会に別のルートで相談することも考えられます。その際、「いつ、誰が、どんな言葉を言ったか」を短くメモしておくと、伝えやすくなります。

「楽をしている」と見えるものの中身

最後に、「ずるい」と見えやすい理由を、事実の範囲で整理しておきます。

外から見ると、不登校の子どもは、朝、家にいて、好きなことをしているように見えることがあります。ただ、これも一般に言われる範囲の話ですが、家にいる姿だけでは、その子が何を感じているかは分かりません。眠れていない、体調がすぐれない、学校のことを考えるだけで気持ちが重くなる、といった状態が、外からは見えにくいだけのことがあります。

国の通知が、不登校というだけで問題行動と受け取られないよう配慮を求めているのは、見た目だけで判断されやすい状況があるからだと読めます。

親御さん自身についても同じです。家で子どもを支えている日々は、外から見えにくい仕事です。連絡、見守り、気持ちの調整、学校や周囲との対応。「何もしていない」ように見えても、実際には、毎日の見えない負担があります。

今日できる小さな一歩

1つだけで構いません。

  1. 「ずるい」という言葉が頭に浮かんだら、その言葉は否定も肯定もせず、「今、疲れているな」とだけ心の中でつぶやく。
  2. 周りから言われたことがあるなら、その場面を紙に1行だけ書いて、頭の外に出す。反論は書かなくて構いません。
  3. 次に同じことを言われたときの、短い返事をひとつだけ決めておく。

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番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。

  • 学校・教育委員会: スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーにつないでもらえるか、在籍校や市区町村の教育委員会に尋ねられます。電話番号は自治体ごとに異なるため、市区町村の公式サイトで確認します。
  • 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783。こどもの福祉に関する様々な相談を受け付けています。全国の児童相談所は、こども家庭庁の一覧(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)で確認できます。
  • 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったとき、すぐ近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間受付(年中無休)です。
  • 子どもの人権110番(法務省): 0120-007-110。平日8:30~17:15、土日祝日・年末年始は休みです。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。「死にたいほどつらい方」向けの案内もあります。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

「ずるい」という言葉は、国の通知が示す不登校の捉え方とは合いません。一方で、自分の中にその言葉が浮かんでしまう親御さんの気持ちは、頑張ってきた分の疲れや、行き場のない不公平感の表れであることが多く、責める必要はありません。周りから言われたときは、全部説明しない、距離を取る、短い返事を決める、話せる人に話す、といった自分の守り方を選べます。きょうだいの気持ちも、同じように受け止めていけます。まずは今日、浮かんだ気持ちをひとつ書き出すところから始めてみてください。

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出典

  • 文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」令和7年10月29日(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm)
  • 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」(https://www.mext.go.jp/content/20251106-mxt_jidou01-000045738_3.pdf)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
  • こども家庭庁「児童相談所一覧」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。