「うちの子が学校に行けなくなったのは、何が原因だったのだろう」。そう考え続けて、夜になっても答えが出ず、スマホで調べている方は多いと思います。自分の関わり方を振り返って、苦しくなっている方もいるかもしれません。

先に結論を書きます。文部科学省の調査には、不登校の児童生徒について学校が把握した事実の集計があります。ただし、これは原因を一つに特定したものではなく、「学校にこういう情報や相談があった」という記録です。この記事では、令和6年度の調査で何が数えられているのかを原文に沿って整理し、数字の読み方と、数字では分からないことをお伝えします。親御さんの育て方や、お子さんの性格を原因とする話ではありません。

学校が把握したこと(生活リズム、やる気が出ない、友人関係、学業)と、お子さん本人が感じていることの間にずれがあることもある、という図"“

「原因」ではなく「把握した事実」を数えている調査

文部科学省は毎年、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を行っています。令和6年度の調査では、小・中学校の不登校児童生徒数は353,970人(小学校137,704人、中学校216,266人)で、過去最多でした。児童生徒1,000人当たりでは38.6人です。高等学校の不登校生徒数は約6万8千人で、前年度から減少したと、文部科学省の通知に記載されています。

ここで知っておきたいのは、聞き方が変わっているという点です。令和5年度調査の通知には、調査方法を「不登校の要因」から「不登校児童生徒について把握した事実」に変更した、と書かれています。以前は学校が「主たる要因」を選ぶ形でしたが、今は、当てはまる事実をすべて選ぶ形(複数回答)です。

令和6年度の資料の注記には、「不登校」と回答した児童生徒全員について、当てはまるものをすべて回答する、令和6年度以前に把握したものも含む、とあります。つまり、今年度に起きたことだけでなく、これまでに学校が知った情報も入っています。

この調査は、先生方が学校で見聞きした範囲の記録です。お子さんが本当に感じていたことを、そのまま測ったものではありません。この点を押さえておくと、数字の見え方が変わります。

令和6年度に多く挙がった項目

令和6年度の「不登校児童生徒について把握した事実」を、小・中学校の合計(353,970人)でみると、割合の高い項目は次のとおりです。

把握した事実 人数 割合
学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった 106,436人 30.1%
生活リズムの不調に関する相談があった 88,563人 25.0%
不安・抑うつの相談があった 85,854人 24.3%
学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた 55,152人 15.6%
いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった 46,624人 13.2%
親子の関わり方に関する問題の情報や相談があった 44,557人 12.6%

(文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」。割合は不登校児童生徒数に対するもの)

複数回答なので、割合を合計すると全体の人数を上回ります。1人のお子さんに、いくつもの事実が当てはまることがある、という前提の表です。

このほか、家庭生活の変化に関する情報や相談があった(28,398人、8.0%)、障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった(26,665人、7.5%)、入学・転編入学・進級時の不適応による相談があった(16,581人、4.7%)、いじめの被害の情報や相談があった(4,913人、1.4%)などの項目もあります。「左記に該当なし」は18,804人(5.3%)でした。

小学校と中学校を分けると、傾向に違いがあります。たとえば「親子の関わり方に関する問題の情報や相談があった」は小学校で16.9%、中学校で9.9%、「家庭生活の変化に関する情報や相談があった」は小学校10.3%、中学校6.6%でした。「いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題」は小学校11.8%、中学校14.1%です。一方、「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」は、どちらも30.1%でした。

なお、高等学校についての「把握した事実」の内訳は、今回の調査で原文を確認できなかったため、この記事では扱いません。

この数字を読むときの3つの注意

1つめ。「相談があった」は、原因が分かったという意味ではない

「やる気が出ない」「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」が上位に並んでいます。これを見て、「気持ちや体の問題なのか」と思う方もいるかもしれません。ただ、これらは「そういう相談があった」という記録です。眠れない、朝起きられない、気持ちが落ち込むといった状態が、登校しづらくなる前からある場合も、そのあとに出てくる場合もあるかもしれません。先に何があって、後に何が起きたのかは、この表からは分かりません。

2つめ。「親子の関わり方」の項目は、家庭が原因だという意味ではない

12.6%という数字を見て、ドキッとした方もいるかもしれません。この項目は、学校に「親子の関わり方について情報や相談があった」ことを示すだけです。調査票の上でも、他の項目と同じく、事実の記録として並んでいます。学校が、保護者との面談や連絡の中で聞いた内容が記録されている場合もあります。小学校のほうが割合が高い点も含めて、この数字だけで、関わり方が不登校の原因だと言うことはできません。

3つめ。先生が把握している内容と、お子さんや保護者の感じ方は、ずれることがある

文部科学省の通知は、「不登校の要因分析に関する調査研究」(令和6年3月公表)に触れています。この研究は、令和4年度に不登校と計上された児童生徒について、教師、本人、保護者の回答を比べたものです。通知によると、不登校のきっかけ・要因について、児童生徒やその保護者の回答と、教師の回答では認識の差が確認されています。

研究の概要には、具体的な違いも載っています。「学業の不振」「宿題の提出」は、教師・本人・保護者の回答割合が比較的近い値でした。一方、「いじめ被害」「教職員からの叱責」などは、教師と児童生徒・保護者で違いがありました。「体調不良」「不安・抑うつ」「居眠り、朝起きられない、夜眠れない」といった心身の不調や生活リズムの不調は、児童生徒や保護者は約7〜8割が回答したのに対し、教師の回答は2割弱でした。

学校が把握している情報は、お子さんの体験の一部にとどまる場合があります。学校の記録に出てこなかったからといって、お子さんが何も感じていなかったわけではありません。

「きっかけ」がはっきりしないことも多い

不登校の理由を聞かれて、「これ」と言い切れない親御さんは少なくありません。お子さん自身も、うまく言葉にできないことがあります。

先ほどの調査研究では、以前の調査で不登校の主たる要因が「無気力・不安」と報告された児童生徒について、詳しく調べています。協力した地域の教師が主たる要因を回答した1,357名のうち、「無気力・不安」は750名(55.3%)でした。この研究は、分かりやすいきっかけが教師から見えない場合に、「無気力・不安」と報告されやすい可能性を示唆しています。また、「不安・抑うつの訴え」の割合は、「無気力・不安」とされた群とそれ以外の群でほとんど変わらず、抑うつや不安の訴えがあるから「無気力・不安」と回答しているとは限らない、とも記されています(調査地域は4か所で、全国の数字ではありません)。

つまり、学校の記録で「無気力・不安」とされていても、それは「学校から見て、はっきりしたきっかけが分からなかった」ことを含んでいるかもしれません。お子さん本人の姿勢を示す言葉ではありません。

学校での出来事、からだの調子、気持ち、生活リズム、家庭の状況が、お子さんを中心に重なり合っている図"“

調査の項目は、学校での出来事、体や心の調子、生活リズム、家庭の状況など、多方面にわたっています。「これが原因」と1つに決めるより、いくつかが重なっていると捉えるほうが、実態に近いという見方もあります。

原因探しより、いま必要なことを考える

原因が分かれば解決に近づく、と思いたくなります。けれども、原因を探すこと自体が、親御さんとお子さんの負担になることがあります。「どうして」と何度も聞かれると、お子さんは責められていると感じるかもしれません。

文部科学省の通知では、支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて社会的に自立することを目指す、という趣旨が示されています。また、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す意味を持つことがある、という点も同じ通知に書かれています。同じ通知は、学業の遅れや進路選択上の不利益などに留意することにも触れています。

原因が分からないままでも、できることはあります。

  • お子さんが安心して休める時間と場所を確保する
  • 眠れているか、食べられているかなど、体の様子を見守る
  • 話したくなったときに話せるよう、聞く姿勢を保つ
  • 学校や、学校以外の相談先に、状況を伝えておく

調査研究の概要でも、学校がどんな対応をしたかについて、保護者は「スクールカウンセラーまたはスクールソーシャルワーカーなどの専門スタッフとの面談」や「学校内に別室登校できる環境整備」等に肯定的な回答が多かった、とされています。一方で、「教育支援センター(適応指導教室)など学校外の教育機関の紹介」は、実施されず残念という回答が多い項目でした。学校外の選択肢を、保護者の側から尋ねてみることも、一つの方法です。

今日できる小さな一歩

1つだけで構いません。

  1. 「理由を聞く」のを、今日は一度お休みする。代わりに、「今日は何が食べたい?」のような、答えやすい声かけを1つ決めておく。
  2. お子さんの様子を、評価を入れずに一行だけ書き留める(「昼まで寝ていた」「夕飯は食べた」など)。学校や相談先に話すときの材料になります。
  3. 「どうして不登校になったのか」と自分を責める気持ちが出てきたら、この記事の数字は「学校に入った情報」の集計であって、親御さんの評価ではないことを思い出す。

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相談窓口

番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。

  • 学校・教育委員会・教育支援センター: お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせてください。電話番号は自治体ごとに異なるため、市区町村の公式サイトで確認します。
  • 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783。全国の児童相談所は、こども家庭庁の一覧(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)で確認できます。
  • 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったとき、すぐ近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間受付(年中無休)です。
  • ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置。住所・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

文部科学省の令和6年度調査が数えているのは、不登校の原因ではなく、学校が把握した事実です。「やる気が出ない」「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」などが多く挙がっていますが、複数回答であり、先生の見える範囲の記録でもあります。お子さんや保護者の感じ方とは、ずれることがあります。原因を1つに決められなくても、親御さんが悪いということではありません。まずは今日、お子さんが安心して過ごせる時間を1つ守ることから始めてみてください。

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出典

  • 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」(https://www.mext.go.jp/content/20251106-mxt_jidou01-000045738_3.pdf)
  • 文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm)
  • 文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00005.htm)
  • 文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究 結果の概要」(https://www.mext.go.jp/content/20251120-mxt_jidou02-100002768_2.pdf)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
  • こども家庭庁「児童相談所一覧」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。