「学校に行けなくなったのは、もしかして発達障害と関係があるのだろうか」。ネットで調べるほど、断定的な言葉や、不安をあおるような情報が目に入って、手が止まってしまった方もいると思います。お子さんのことを考えるほど、どう受け止めてよいか分からなくなるのは自然なことです。

先に結論を書きます。公的な資料で確認できるのは、「学校が把握した事実」として、障害に関する支援の求めや相談があった児童生徒がいる、という記録までです。不登校の原因が発達障害だと示したものではありません。また、この記事は診断や受診の目安を示すものではありません。ここでは、公的な情報で言えることと言えないこと、そして学校や地域で使える相談先を整理します。

学校の記録と、お子さん本人の気持ちは、同じとは限らないことを示した図"“

文部科学省の調査にある「障害」の項目は何を表すか

文部科学省は毎年、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を行っています。令和6年度の調査では、小・中学校の不登校児童生徒353,970人について、学校が把握した事実を集計しています。当てはまるものをすべて選ぶ複数回答で、令和6年度以前に把握したものも含みます。

この中に、「障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった」という項目があります。人数は26,665人、割合は7.5%です(不登校児童生徒数に対する割合)。

この項目の読み方で大切なのは、次の3点です。

  • 「相談があった」という記録です。 学校に、特別な教育的支援についての求めや相談があったことを示します。誰からの相談かは、この項目からは分かりません。
  • 「疑い含む」とあります。 診断を受けた人数ではありません。学校が把握した情報の区分です。
  • 原因を示す項目ではありません。 令和5年度の調査から、聞き方が「不登校の要因」から「不登校児童生徒について把握した事実」に変わっています。この集計は、不登校になった理由を特定したものではありません。

同じ調査には、「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」(30.1%)、「生活リズムの不調に関する相談があった」(25.0%)、「不安・抑うつの相談があった」(24.3%)など、ほかにも多くの項目が並んでいます。1人のお子さんに複数の項目が当てはまることもあります。調査全体の読み方は、同じサイトの「不登校の原因は何だと言われている?」の記事で詳しく書いています。

また、文部科学省が委託した「不登校の要因分析に関する調査研究」では、不登校のきっかけについて、教師の回答と、児童生徒や保護者の回答に認識の差があったと報告されています。学校の記録は、お子さんの体験のすべてではありません。

「不登校の原因は発達障害」とは言えない理由

「割合が決まっているなら、関係があるのでは」と考える方もいると思います。公的な資料から言えるのは、ここまでです。

1つめに、7.5%は「障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった」という記録の割合です。発達障害のある子の何割が不登校になるのか、という数字ではありません。

2つめに、この調査は不登校になった児童生徒だけを集計しています。不登校でない児童生徒の側と比べた数字がないので、「関係が強い・弱い」は、この調査からは言えません。

3つめに、先に何があって後に何が起きたのか、順番も分かりません。

このため、「発達障害だから不登校になる」とも、「不登校の原因は発達障害ではない」とも、公的資料からは言えません。お子さんが学校に行きづらくなった背景は、学校での出来事、体の調子、気持ち、生活リズム、家庭の状況など、いくつもが重なっていることがあります。

研究論文では、どう書かれているか

検索でよく見かける論文に、「不登校と発達障害: 不登校児の背景と転帰に関する検討」があります。J-STAGEに掲載された原文の書誌情報と抄録を確認できたので、要点を紹介します。

  • 著者: 鈴木菜生、岡山亜貴恵、大日向純子、佐々木彰、松本直也、黒田真実、荒木章子、高橋悟、東寛(9名。所属は旭川医科大学小児科など)
  • 掲載誌: 『脳と発達』49巻4号、255〜259ページ、2017年(日本小児神経学会)
  • 対象: 2007年から2009年に、論文の著者らの施設(小児科)を受診した不登校児80名

抄録の目的は「不登校児の発達特性と転帰に影響する因子を検討した」ことです。抄録は、受診した80名では発達障害や精神疾患を背景に持つ子が多かったと報告しています。同時に、不登校となった誘因は複数が混在していたこと、対人関係の問題を契機とする例が最も多かったことも書かれています。結論には、発達特性の把握と教育的・心理的な支援が有用である可能性が「示唆された」とあります。

この論文を読むときは、次の点に注意してください。

  • 対象は、著者らの施設を受診した80名です。不登校の児童生徒全体を代表した調査ではありません。受診した子どもに、発達障害のある子が多く含まれていた可能性もあります。
  • 論文が見ている「転帰」は、1年後の登校の状況です。この記事は、登校することを目標とはしていません。お子さんが安心して過ごせることを大切にしています。
  • 数値は、この論文の対象に限った結果です。一般の不登校の児童生徒に当てはめることはできないため、この記事では紹介していません。

この論文は、「発達特性を把握し、学校や周囲の関わり方を整えることが、お子さんの助けになる場合がある」という見方を示したものです。個別のお子さんが発達障害かどうかを、保護者や周囲が判断するための材料ではありません。判断は、医療機関などで行われるものです。

学校で使える仕組み(特別支援教育・通級・合理的配慮)

ここからは、学校で受けられる支援の公式な説明を整理します。診断の有無とは別に、学校に相談できることがあります。

特別支援教育。 文部科学省は、特別支援教育を「障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導や必要な支援を行うもの」としています。発達障害を含む障害のある児童生徒への支援の体制を、学校で整える取り組みです。

通級による指導。 文部科学省は、通級による指導を「通常の学級に在籍し、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする児童生徒に対して、障害に応じた特別の指導を行う指導形態」と説明しています。小学校、中学校、高等学校等で行われます。対象や手続きについては、学校や教育委員会に確認してください。

合理的配慮。 文部科学省所管の事業分野の事業者(私立学校を設置する学校法人等を含む)向けの対応指針では、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があったとき、負担が過重でない範囲で、必要かつ合理的な配慮をすることとされています。令和3年の法改正で、事業者の合理的配慮の提供は法的義務になりました。学校での具体的な内容は、お子さんの状況によって異なります。ご家庭で希望や困りごとを、学校に伝えることから始まります。

特別支援教育コーディネーター。 文部科学省の資料では、特別支援教育コーディネーターは、学校内の関係者や関係機関との連絡・調整を行い、保護者に対する学校の窓口として機能することが期待される、とされています。担任の先生に話しにくいとき、「特別支援教育コーディネーターの先生と話したい」と学校に伝えることもできます。

スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどとの面談について、保護者から肯定的な回答が多かった、という調査結果もあります(上記の「不登校の要因分析に関する調査研究」)。学校の中に、相談できる人が複数いることを知っておくと、気持ちが少し楽になるかもしれません。

発達障害に関する公的な相談窓口

発達障害者支援法では、発達障害のある方への支援が定められています。厚生労働省の資料によると、国立障害者リハビリテーションセンターに設置された「発達障害情報・支援センター」が、全国の発達障害者支援センターの中央拠点として、情報の発信や、自治体への助言などを行っています。

各地域の「発達障害者支援センター」は、発達障害情報・支援センターのサイトに一覧が掲載されています。一覧のページには、センターの事業内容は異なるため、初めて利用する方や支援内容を詳しく知りたい方は、まずお住まいの地域を担当するセンターに問い合わせてほしい、と書かれています。

ここで、お伝えしておきたいことがあります。これらの窓口に相談することは、お子さんに診断を受けさせる、ということではありません。「気になることがあって話を聞いてほしい」という段階でも、どこにつながるかを知る手がかりになります。受診するかどうかを、この記事が決めることはありません。迷うときは、窓口の方と一緒に考えてください。

家庭を中心に、学校(先生・特別支援教育コーディネーター)、教育委員会、発達障害者支援センター、地域の相談窓口がつながっていることを示した図"“

今日できる小さな一歩

1つだけで構いません。

  1. 原因を決めようとするのを、今日はお休みする。「発達障害かどうか」「親の関わりが悪かったか」を、答えが出ないまま考え続けなくて大丈夫です。
  2. お子さんの様子を、評価を入れずに数行メモする(「朝はゆっくり起きた」「ゲームの話は楽しそうだった」など)。相談するときの材料になります。
  3. 学校に、「特別支援教育コーディネーターの先生と話すことはできますか」と電話かメモで聞いてみる。相談したからといって、何かが決まるわけではありません。

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相談窓口

窓口の名称・番号は、運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。

  • 学校(担任・特別支援教育コーディネーター・スクールカウンセラー)、市区町村の教育委員会: 電話番号は自治体ごとに異なります。学校に電話するか、市区町村の公式サイトで確認してください。
  • 発達障害者支援センター: 全国の一覧は発達障害情報・支援センターのページ(https://www.rehab.go.jp/ddis/action/center/)にあります。お住まいの地域を担当するセンターの連絡先を、一覧で確認してください。
  • 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783。全国の児童相談所は、こども家庭庁の一覧(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)で確認できます。
  • 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったとき、すぐ近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間受付(年中無休)です。
  • ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置。連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

文部科学省の調査にある「障害(疑い含む)」の項目は、学校が把握した情報の記録で、不登校の原因を示すものではありません。論文にも、発達障害と不登校の関わりを示すものがありますが、受診した一部の子どもを対象にした結果で、個々のお子さんに当てはめることはできません。診断や受診は、この記事が決めるものではなく、医療機関や相談窓口と一緒に考えることです。学校には特別支援教育コーディネーターなど、相談できる人がいます。ひとりで答えを出さなくて大丈夫です。

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出典

  • 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」(https://www.mext.go.jp/content/20251106-mxt_jidou01-000045738_3.pdf)
  • 文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00005.htm)
  • 文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究 結果の概要」(https://www.mext.go.jp/content/20251120-mxt_jidou02-100002768_2.pdf)
  • 文部科学省「特別支援教育の体制整備の推進」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/006/1310774.htm)
  • 文部科学省「2.特別支援教育の現状」(通級による指導)(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/002.htm)
  • 文部科学省「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針の策定について」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/mext_02599.html)
  • 文部科学省「資料3 特別支援教育コーディネーター養成研修について」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1298211.htm)
  • 厚生労働省「発達障害者支援施策について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hattatsu/index.html)
  • 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)「発達障害者支援センター・一覧」(https://www.rehab.go.jp/ddis/action/center/)
  • 鈴木菜生ほか「不登校と発達障害: 不登校児の背景と転帰に関する検討」『脳と発達』49(4):255-259、2017年(https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn/49/4/49_255/_article/-char/ja/)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」「児童相談所一覧」、厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」、一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。