「ひきこもりって英語でどう言うのだろう」。海外の知人や学校に状況を伝えたいとき、英語の記事で「hikikomori」という言葉を見かけたとき、あるいは、お子さんの状態について英語で書かれた情報を探しているとき。そんなふうに調べている方もいると思います。

先に結論を書きます。確認できた学術資料では、「ひきこもり」は日本語の読みのまま「hikikomori」と書かれることが多く、「social withdrawal(社会的な引きこもり・社会からの退避)」などの説明的な言い方と一緒に使われていました。日本だけの言葉でも、特定の病名でもありません。この記事では、国の資料と学術論文で原文を確認できた範囲だけを整理します。確認できなかったことは、確認できなかったと書きます。

どの言い方であっても、お子さんの状態や親御さんの関わり方を責めるものではありません。

「ひきこもり」から「hikikomori」(そのまま使われる)と「social withdrawal」(説明的な言い方)の2つへ矢印が伸びている図。どちらも状態を表す言葉で、病名ではないという注釈つき"“

「hikikomori」は、そのまま国際的な学術論文で使われています

世界保健機関(WHO)や各国の公的機関が「hikikomori」をどう呼んでいるかを定めた文書は、今回の確認では見つけられませんでした。ここで確認できたのは、国際的な学術論文での使われ方です。

2020年の World Psychiatry 誌の論文(Kato, Kanba, Teo)は、この言葉が1990年代後半に日本で、主に青年や若者に見られる「重く長く続く社会的な引きこもり(a severe and prolonged form of social withdrawal)」を指す言葉として現れたと説明しています。そのうえで、この言葉は、日本に特有の問題として見られる段階から、世界の健康にかかわるかもしれない課題として見られる段階へ移ってきた、とも書いています。

2018年の同じ雑誌の論文(Kato, Kanba, Teo)は、hikikomori に似たケースが、香港、オマーン、スペインなど社会や経済の背景が異なる国でも報告されており、インド、韓国、米国でも研究で確認されている、と述べています。2020年の BJPsych International 誌の論文(Tan, Lee, Kato)も、スペイン、ウクライナ、香港、オマーン、フランス、イタリア、米国などで事例が報告されていることを挙げ、日本の文化に固有のものだとする従来の見方に疑問が投げかけられている、としています。

つまり、今回確認した3本の学術論文では、「hikikomori」はローマ字のまま使われ、「social withdrawal」などの説明が添えられていました。「ひきこもりは日本特有のもの」と決めつける書き方は、確認した論文では取られていません。

なお、同じ BJPsych International の論文は、この日本語を「引く(hiku)」と「こもる(komoru)」の2つの語からなる言葉として紹介しています。言葉の成り立ちの説明であって、お子さんの意思や性格を評価するものではありません。

「social withdrawal」などの説明的な言い方

論文で hikikomori と並べて使われる言葉も、確認できた範囲で挙げます。

  • social withdrawal: 「社会的な引きこもり」にあたる、いちばん広い言い方です。2018年・2020年の World Psychiatry の論文はいずれもこの語で hikikomori を説明しています。
  • prolonged social withdrawal(長く続く社会的な引きこもり): 2020年の BJPsych International 誌の論文は、題名で hikikomori にこの言葉を添えています。

論文によっては、「pathological(病的な)」という語がつく言い方も見られます。ただし、これは研究者が研究のために使っている言い方です。この記事は、お子さんの状態を「病的」「異常」と評価する立場を取りません。この語の意味を読み解くことも、専門家の監修を受けていない編集部にはできないため、ここでは触れません。

もう一つ、辞書やネット上の解説で「acute social withdrawal」という言い換えを見かけることがあります。今回確認した国の資料・学術論文の原文では、この言い方は確認できませんでした。そのため、この記事では公的な訳語としては扱いません。

また、日本の厚生労働省や内閣府が、ひきこもりの英語表記を公式に定めているかどうかも、今回の確認では見つけられませんでした。公的な定訳があるとは書きません。

日本の定義と、国際的な研究での提案

日本の厚生労働省ガイドライン(2010年)の定義は、次のとおりです。原文は日本語で、別の記事「ひきこもりの定義とは」でも詳しく扱っています。

様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。

要点は、原因を一つに決めていないこと、「状態」を指す「現象概念」であること、6か月は「原則」の目安であること、外出していてもよいことです。また、原則として統合失調症の症状に基づくひきこもり状態とは区別する、という但し書きがあります。

国際的な研究の側では、2020年に、研究者のグループが評価の仕方をそろえるための基準を論文で提案しています。ただし、これは研究者による提案です。国や学会が正式に採用したものかどうかは、今回の確認では確かめられませんでした。また、この記事は専門家の監修を受けていないため、その基準の項目は紹介しません。紹介してしまうと、お子さんや親御さん自身に当てはめて確かめるものと受け取られるおそれがあるためです。「国際的な定義が決まっている」とも書きません。

日本のガイドラインも、国際的な研究の提案も、お子さんに当てはまるかを判定して、相談できるかどうかを決めるためのものではありません。当てはまるかどうかを自分で確かめる必要はありません。

厚生労働省が令和7年1月に公表した「ひきこもり支援ハンドブック」は、支援の対象を「その状態にある期間は問いません」とし、生きづらさを感じている期間によって支援の必要性が変わるものではない、としています(日本語の原文)。「6か月」に届いていなくても、相談してかまいません。

ひきこもりは、診断名(病名)ではありません

英語で hikikomori を調べると、「diagnostic criteria」という語が目に入るため、病名のように感じる方もいるかもしれません。確認できた根拠は次のとおりです。

  • 厚生労働省のガイドラインは、ひきこもりを、一つの疾患や障害にのみ現れる症状ととらえるべきではなく、様々な疾患の症状として、また様々な葛藤の徴候として現れるものと理解すべきだとしています。定義そのものも「現象概念」と書かれています。これは別の記事「ひきこもりの定義とは」で確認した根拠と同じです。
  • 2018年の World Psychiatry 論文は、hikikomori がさまざまな精神疾患と重なって現れうると述べています。

2020年の論文にあるのは、研究者による提案です。ひきこもり状態にあることが、そのまま特定の病気を意味するわけではありません。診断するかどうか、どんな診断になるかは、医師などの医療の場で本人の状態を見て判断することで、この記事では何も言えません。

海外で暮らす日本人家庭が、英語で状況を伝えたいとき

海外で暮らす家庭が、現地の学校や相談先に状況を伝えるとき、「hikikomori」や「social withdrawal」というラベルより、今の様子を短く説明するほうが伝わりやすい場合があります。次の2文は公的な定訳ではなく、編集部が書いた一例です。

  • My child has stayed at home for a long time.
  • We would like to talk about what kind of support is available.

現地で使われている言葉は、国や機関によって違うかもしれません。現地の公的な相談窓口や、日本の在外教育施設の窓口については、今回の確認では見つけられませんでした。お住まいの地域の公式ページで確認してください。

外国につながる家庭が、日本で相談するとき

日本で暮らす外国につながるご家庭が、ひきこもり状態にあるお子さんのことを相談する場合の窓口を、公式ページで確認できた範囲で書きます。

  • ひきこもり地域支援センター: 厚生労働省のページによると、全ての都道府県と指定都市(67自治体)に設置されています。社会福祉士や精神保健福祉士、保健師、公認心理師、臨床心理士などの資格を持つ「ひきこもり支援コーディネーター」が、本人や家族の相談に応じると説明されています。外国語での相談に対応しているかどうかは、今回確認できた公式の情報には書かれていませんでした。問い合わせるときに、使える言語を直接尋ねてみてください。
  • よりそいホットライン: 公式サイトに「外国語による相談」の案内があり、英語、中国語、韓国・朝鮮語、タイ語、タガログ語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、ネパール語、インドネシア語が挙げられています。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応すると書かれています。受付時間や、どの言語がいつ使えるかは、公式サイトで確認してください。ただし、ひきこもりに特化した窓口ではなく、さまざまな悩みの相談窓口です。

不登校のお子さんの場合の、外国につながる家庭向けの案内は、別の記事「不登校は英語で何と言う?」にまとめています。

今日できる小さな一歩

1つで十分です。

  1. 英語で伝える必要があるなら、ラベルを探す前に、お子さんの今の様子を一文で書き出してみる。
  2. お住まいの地域の「ひきこもり地域支援センター」のページを開いて、場所と連絡先を見ておく。電話は、その後でかまいません。
  3. 英語の言葉が気になって不安になったときは、「どの言葉も、お子さんや親御さんを責めるものではない」と、いったん思い出す。

今の様子を一文で書く、地域のひきこもり地域支援センターを調べる、外国語で相談できるか聞いてみる、の3つを順に矢印でつないだ図"“

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相談窓口

番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。

  • ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置されています。住所・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。外国語で相談するときは、最初の日本語のガイダンスのあとに「2」を押す、と公式ページに書かれています(https://www.since2011.net/yorisoi/en/)。対応する言語は曜日や時間帯で変わります。
  • お住まいの自治体の窓口: 学齢期のお子さんは、学校や教育委員会も相談先になります。成人のお子さんは、自治体の福祉の窓口や保健所・精神保健福祉センターにも相談できます。電話番号は自治体ごとに異なるため、自治体の公式サイトで確認してください。
  • 児童相談所相談専用ダイヤル: 0120-189-783。全国共通の番号で、児童相談所に相談できます(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
  • 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったときに、すぐ児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です。
  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間相談できる窓口として案内されています(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112216.html)。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

「ひきこもり」は、確認できた学術論文では「hikikomori」とそのまま書かれ、「social withdrawal」などの言葉で説明されます。日本の厚生労働省ガイドラインの定義は支援のための目安です。国際的な研究では2020年に研究者による提案もありますが、あくまで提案です。どれも病名ではなく、お子さんの価値や親御さんの関わり方を評価するものでもありません。英語の名前に迷ったら、ラベルより、お子さんの今の状況と、必要な支えを伝えることを優先してみてください。

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出典

  • 厚生労働省(厚生労働科学研究費補助金 研究班)「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン(本文)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000807675.pdf)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援推進事業(ひきこもり支援ハンドブック掲載ページ)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf)
  • Kato TA, Kanba S, Teo AR「Defining pathological social withdrawal: proposed diagnostic criteria for hikikomori」World Psychiatry 2020(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6953582)
  • Kato TA, Kanba S, Teo AR「Hikikomori: experience in Japan and international relevance」World Psychiatry 2018(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5775123)
  • Tan MPJ, Lee W, Kato TA「International experience of hikikomori (prolonged social withdrawal) and its relevance to psychiatric research」BJPsych International 2020(https://www.cambridge.org/core/product/6853F26FF14159B1986F5680E210B6E4)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)、外国語相談の案内(https://www.since2011.net/yorisoi/en/)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
  • 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」掲載ページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112216.html)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報・学術論文をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。