「このまま休み続けたら、この子の進路はどうなるのだろう」。高校生のお子さんが学校に行けなくなると、中学までとは違う先の見えなさがあります。夜になって、転校や退学、高卒認定といった言葉を検索している方もいると思います。
先に結論を書きます。高校には、転学、通信制課程への移り方、休学、高卒認定試験など、公的な制度として用意されている道がいくつもあります。どれを選ぶかに順番はなく、いま決める必要もありません。制度の細かい扱いは学校によって違うので、具体的なことは在籍校に聞いて確かめるのが確実です。ここでは、文部科学省などの公式資料で確認できた範囲を整理します。登校を目標にする前提では書いていません。
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いまの状況は、特別なことではない
文部科学省の令和6年度調査(「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」)では、高等学校の不登校生徒数は約6万8千人で、前年度から減少したと報告されています。同じ調査では、高等学校の中途退学者数は44,571人で、前年度の46,238人から減少したとされ、主な理由は進路変更が最も多く約4割でした(文部科学省の令和7年10月29日付通知)。
数字から分かるのは、同じように悩む家庭が全国にあること、そして学校を離れる理由として「進路変更」が最も多く報告されていることです。個々の事情までは分かりません。お子さんの場合にどうなるかを示す数字ではないので、参考にとどめてください。
学校を変える:転学と編入学
学校教育法施行規則(e-Gov法令検索で確認)には、高校の転学についての定めがあります。
- 第92条第1項: 他の高等学校へ転学したい生徒がいるとき、校長は在学証明書などの必要な書類を転学先の校長に送り、転学先の校長は教育上支障がない場合に転学を許可できる
- 第92条第2項: 全日制、定時制、通信制の課程どうしの転学や転籍では、修得した単位に応じて相当する学年に転入できる
- 第91条: 学年の途中や第2学年以上に入学を許可されるのは、相当年齢に達し、その学年に在学する者と同等以上の学力があると認められた者
ここで押さえておきたいのは、これまでに修得した単位が、課程を変えるときの学年の決め方に関わるという点です。ただし、どの単位がどう引き継がれるか、転入できる時期や人数の枠、試験や面接の有無は、受け入れ先の学校と設置者(都道府県など)の運用によります。国の統一的な基準は今回の調査では確認できませんでした。募集の有無は学校ごとに異なるので、気になる学校があれば、その学校に直接問い合わせることになります。
通信制高校も高等学校で、全日制から通信制への転入も、上の第92条第2項の対象に含まれます。通学の頻度や学習の進め方、サポートの内容は学校ごとに違うため、ここでは制度上そうした道があることまでの紹介にとどめます。
なお、いまの学校に在籍したまま通信教育で単位を取る制度もあります。施行規則第88条の4は、学校生活への適応が困難で相当の期間欠席している生徒などを対象に、教育上有益と認めるときは、授業に代えて通信教育を行えると定めています。使えるかどうかは学校の判断と体制によるため、在籍校に尋ねてみてください。
休む:休学と、その先の制度
施行規則第94条は、休学または退学をしようとするときは校長の許可を受けなければならないと定めています。休学を認める期間、手続き、休学中の学費の扱い、復学の時期は、学校の規則や設置者によって違います。「休学できるか」「何年まで認められるか」は、在籍校に聞かないと分かりません。
休学や退学という言葉は重く聞こえますが、制度としては、状況に応じて選べる手続きの一つです。休学をいつ決めるか、決めないかも、急ぐ必要はありません。お子さんの様子を見ながら、まず情報を集めるだけでも構いません。
単位と卒業の条件
卒業(全課程の修了)には、高等学校学習指導要領の定めるところにより、74単位以上の修得が必要です(施行規則第96条)。出席日数だけでなく、単位の修得が条件になっています。各科目の単位をどのように認めるか、進級をどう判断するかは、学校の規則によります。
また、施行規則第97条から第100条には、他の高等学校で修得した単位や、大学・専修学校などでの学修、高卒認定試験の合格科目に係る学修などを、校長が教育上有益と認めるときに単位として認められる仕組みがあります。ただし、これらは校長の判断で行われるものです。
高卒認定試験:もうひとつの学びの道
高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験)は、高校を卒業していないなどのため大学等を受験できない人に、高校卒業者と同等以上の学力があることを認定する試験です。合格者には、大学・短大・専門学校の入学資格が付与されます(文部科学省「高等学校卒業程度認定試験の概要」)。文部科学省の案内で確認できた点を整理します。
- 受験資格: 16歳になる年度から受験できます。高校等に在籍している人も受験できます。すでに大学入学資格を持っている人は受験できません
- 科目: 令和8年度から「情報」が加わり、合格に必要な科目数は受験者の選択により9〜10科目です
- 合格の扱い: 合格者が18歳未満の場合は、満18歳の誕生日から合格者となります
- 回数: 毎年2回(8月、11月)です。令和8年度第2回は11月7日・8日の実施で、出願期間は9月11日(消印有効)で終了しています。次年度の日程は、文部科学省の高卒認定試験のページで確認してください
- 受験料: 令和8年度は、7〜10科目で8,500円、4〜6科目で6,500円、1〜3科目で4,500円です
高校に在籍したまま受験でき、合格した科目は、高校へ申請することで単位として認められる場合があります。認めるかどうかは学校長の判断です。概要資料にも「合格科目は、学校長の判断により卒業単位として単位認定することができる」と書かれています。
大切なのは、高卒認定は「卒業の代わりに選ばなければならないもの」ではなく、選択肢の一つだということです。高校で単位を重ねていく道、通信制で卒業を目指す道、高卒認定で大学等の入学資格を得る道は、並べて比べられるもので、どれが上ということはありません。選び方にも、組み合わせにも、正解はありません。
学費の支援は、移っても受けられる?
授業料の支援として、高等学校等就学支援金があります。令和8年度から新制度となり、所得制限が撤廃されました。申請手続きが必要で、学校からの案内に従って行います(文部科学省「高校生等への修学支援」)。
進路を考えるうえで気になりやすいのは、休学や転学のときの扱いです。文部科学省の就学支援金Q&Aには、次の趣旨の説明があります。このQ&Aは平成26年に登録された古いページで、令和8年度の制度改正に合わせて内容が更新されています。ただし、以下の個別の扱いが新制度でも同じかどうかは、通う学校や都道府県に確認してください。
- 支給期間は、原則として標準的な修業年限の36月まで(定時制・通信制は原則48月まで)
- 休学したとき、休学中は支給を止める申出を学校に出せる。申出をしない場合は、その期間の支給額は0円として計算され、復学後の残りの支給期間は休学した期間を差し引いた期間になる
- 全日制から通信制に転学した場合などの支給期間は、在学した月数を踏まえた計算式で決まる
- 高校を中退して再入学する場合に、支給期間を超えてしまうときに、就学支援金相当の支援を行う学び直しの制度がある。詳細は入学先の学校や都道府県に問い合わせる
授業料以外には、教科書費などを支援する返還不要の「高校生等奨学給付金」もあります。申請の時期や手続きは都道府県ごとに異なります。
学費は、進路の選び方に大きく影響する心配事です。休学や転学を決める前に、「就学支援金や学費の扱いがどうなるか」を学校に聞いておくと、判断の材料が増えます。
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学校の外にある相談先
高校の中だけで考えなくてよい、というのも大事な点です。文部科学省の令和元年の通知には、高校へ進学したものの学校に通えない人や中途退学した人に対して、多様な進学や職業訓練などの機会について相談できる窓口や、社会的自立を支援する受け皿が必要だと書かれています。
- ひきこもり地域支援センター(厚生労働省): 都道府県と指定都市に設置され、ひきこもりの状態にある本人やその家族への相談支援を行っています。「ひきこもり」という言葉に当てはまらなくても、家族から相談できます
- 地域若者サポートステーション(サポステ・厚生労働省): 働くことに悩みを抱えている15歳から49歳までの方の就労を支援する機関で、全ての都道府県に設置されています(令和7年度4月現在、全国179か所)。中心は就労支援です。在学中の利用可否や、進路の相談にどこまで応じてもらえるかは、地域のサポステに確認してください
- 都道府県教育委員会の相談会: 進路や卒業に不安のある中高生と保護者、中途退学した方を対象にした相談会を行っている自治体があります。実施の有無は都道府県によるため、お住まいの教育委員会のサイトで探してください
親ができること
文部科学省の通知には、不登校の児童生徒への支援は「学校に登校する」という結果のみを目標とするのではなく、自らの進路を主体的に捉えて社会的に自立することを目指す必要がある、という趣旨の記載があります。また、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある、とも書かれています。
高校生は、自分の進路を自分で考え始める年齢です。親が先に道を決めるより、制度の情報を集めたうえで、本人が考えたくなったときに差し出せるようにしておく、という関わり方が現実的です。選択を急がせる必要はありません。
お子さんが「学校を辞めたい」「別の学校に行きたい」と話したときも、それは考える材料が出てきたということです。親が良し悪しを決めず、まず「教えてくれてありがとう」と受け止めるところから始められます。
今日できる小さな一歩
- 在籍校に、休学・転学・単位・就学支援金の扱いを聞く。 担任、学年主任、養護教諭、教育相談の担当者など、話しやすい人で構いません。聞きたいことを紙に書いてから連絡すると落ち着いて話せます。聞いた内容は日付とあわせてメモします。
- お子さんには、制度の話を「情報」として軽く伝える。 「こういう道もあるらしいよ。考えたくなったら言ってね」程度で十分です。返事を求めなくて大丈夫です。
- お住まいの地域のひきこもり地域支援センターやサポステの連絡先を調べておく。 今日は調べるだけで構いません。
ひとりで抱え込まず、話してみませんか
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不登校支援の専門カウンセラーが、お話を伺います。1回30分まで無料です。
※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。
相談窓口
番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変わることがあるため、かける前に公式ページをご確認ください。
- 在籍校・教育委員会: まず在籍校(担任、養護教諭、スクールカウンセラー、教育相談担当)に相談できます。公立か私立か、都道府県立か市立かで窓口が変わるため、学校に聞いてください。
- ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置。所在地・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
- 地域若者サポートステーション: 15歳から49歳までの就労に関する相談。所在地は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/saposute.html)から確認できます。
- 高卒認定試験について: 文部科学省 総合教育政策局 生涯学習推進課。試験日程・出願方法は文部科学省のページ(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/index.htm)で確認できます。
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310。24時間受付(年中無休)です。
- 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもと思ったとき、お近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
- よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。
お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。
まとめ
高校生が学校に行けなくなったあとにも、転学、通信制課程への移り方、休学、高卒認定試験など、制度として用意された道があります。修得した単位を踏まえて学年を決める仕組みや、学費の支援の扱いなど、制度の細部は学校や都道府県によって違うので、在籍校に聞いて確かめるのが確実です。どれを選ぶか、いつ決めるかに決まりはなく、急ぐ必要もありません。ひとりで抱え込まず、聞ける場所に聞いてみてください。
ひとりで抱え込まず、話してみませんか
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※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。
出典
- 文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(令和7年10月29日)(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm)
- e-Gov法令検索「学校教育法施行規則」第88条の4、第91条、第92条、第94条、第96条、第97条〜第100条(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000080011)
- 文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/index.htm)
- 文部科学省「高等学校卒業程度認定試験の概要」(https://www.mext.go.jp/content/20260227-mxt_syogai02-000013750_1gaiyo01.pdf)
- 文部科学省「高校生等への修学支援」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/index.htm)
- 文部科学省「高等学校等就学支援金制度に関するQ&A」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342600.htm)
- 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm)
- 厚生労働省「地域若者サポートステーション」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/saposute.html)
- 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
- こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
- 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)
いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。



