「どうしてこの子は、こうなったのだろう」。そう考え続けて、自分の関わり方を一つひとつ振り返り、夜になってスマホで調べている方は多いと思います。苦しくなってしまう方もいるかもしれません。

先に結論を書きます。内閣府の調査には、ひきこもり状態にある方が「現在の状態になった理由」として選んだ項目の集計があります。ただし、これは本人が当てはまると感じたものを選んだ回答の集まりで、原因を特定したものではありません。「特に理由はない」「わからない」を選んだ方もいます。この記事では、令和4年度の調査で何が聞かれ、どんな項目が挙がっているのかを原文に沿って整理し、数字の読み方をお伝えします。親御さんの育て方や、お子さんの性格を原因とする話ではありません。

中央のひとりの人のまわりに、学校、人間関係、仕事、からだ、社会の出来事、その他が並び、理由がひとつに決められないことがあることを表した図"“

どの調査の、どの設問か

使うのは、内閣府が令和4年(2022年)11月に実施した「こども・若者の意識と生活に関する調査」です。報告書は令和5年3月にまとめられ、現在はこども家庭庁のページで公開されています。

調査の概要は次のとおりです。

  • 対象は、令和4年4月1日現在で10歳〜39歳の男女20,000人と、40歳〜69歳の男女10,000人です。
  • 郵送で調査票を送り、オンラインでも回答できる方法でした。
  • 有効回収数は、10歳〜14歳が1,520人、15歳〜39歳が7,035人、40歳〜69歳が5,214人です。
  • 調査期間は令和4年11月10日〜25日です(11月30日までに事務局に届いた分を集計)。

この調査では、普段の外出の様子などから「広義のひきこもり群」を定義しています。具体的には、普段の外出が「趣味の用事のときだけ」「近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からほとんど出ない」のいずれかで、その状態が6か月以上続いている人です。ただし、病名として統合失調症や身体的な病気を記入した人、妊娠・出産・育児や家事・介護などを担い家族以外とも会話している人、就労している人などは含めない、という整理です。定義と人数は別の記事で詳しく扱っていますので、ここでは設問の読み方に絞ります。

報告書の注記には、この定義は同じ基準を一律にあてはめた結果であり、実際にはひきこもりの状態にない人が含まれたり、ひきこもりの状態にある人が除かれたりする可能性がある、と書かれています。

きっかけにあたる設問は、次の2つです。

  • 問18-1「あなたの外出状況が現在の状態になった主な理由は何ですか」(複数回答)
  • 問18-2「あなたの外出状況が現在の状態になった最も大きな理由は何ですか」(単一回答。問18-1で具体的な項目を選んだ人だけが答える設問)

つまり、調査の言葉は「きっかけ」ではなく「理由」で、本人が選択肢から選ぶ形です。誰かが外から原因を判定したものではありません。この記事では、設問の言葉にそろえて「理由」と書き、まとめて呼ぶときだけ「きっかけ」と書きます。

アンケート用紙の複数の項目にチェックが入っている様子と、その横に、どれにも当てはまらないかもしれないことを示す疑問符と空白のチェック欄の図"“

15歳〜39歳の広義のひきこもり群が選んだ理由

15歳〜39歳対象の調査で、広義のひきこもり群は144人でした(有効回収数の2.05%)。この144人が、問18-1で選んだ割合は次のとおりです。複数回答なので、合計は全体の人数を超えます。

選んだ理由(問18-1) 割合
退職したこと 21.5%
人間関係がうまくいかなかったこと 20.8%
中学校時代の不登校 18.1%
新型コロナウイルス感染症が流行したこと 18.1%
学校になじめなかったこと 12.5%
病気 11.8%
職場になじめなかったこと 11.1%
就職活動がうまくいかなかったこと 10.4%
高校時代の不登校 9.0%

(こども家庭庁掲載「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書(令和5年3月)」第3部。割合は広義のひきこもり群144人に対するもの。上位だけを抜粋しています)

このほか、「小学校時代の不登校」「大学(専門学校、短期大学等を含む)時代の不登校」はいずれも4.9%、「受験に失敗したこと(高校・大学等)」は1.4%でした。

そして、次の3つの回答も同じ表にあります。

  • 「特に理由はない」: 11.8%
  • 「わからない」: 7.6%
  • 「その他」: 10.4%

「病気」は11.8%の方が選んでいます。ここでは数字の紹介にとどめます。この調査の定義では、病名として統合失調症や身体的な病気を記入した方はひきこもり群に含まれていません。病気を選んだことと、現在の状態との関係は、この表からは読み取れません。

もう一つの設問、問18-2(最も大きな理由を1つだけ選ぶ)では、回答数が114人で、「退職したこと」14.9%、「人間関係がうまくいかなかったこと」14.0%、「新型コロナウイルス感染症が流行したこと」12.3%、「病気」10.5%、「中学校時代の不登校」9.6%などの順でした。1つに絞ると、多くの項目で割合は小さくなります。

「特に理由はない」「わからない」を選んだ人もいる

先ほどの表のとおり、15歳〜39歳の広義のひきこもり群では、「特に理由はない」を11.8%、「わからない」を7.6%の方が選んでいます。複数回答の設問なので、この2つの数字を足した人数が「理由を選ばなかった人」にあたるとは、原文の数字だけでは言えません。そのため、ここでは合計せず、それぞれの数字のまま読みます。

言えるのは、次のことです。

  • 具体的な項目をいくつか選んだ人もいれば、「特に理由はない」「わからない」を選んだ人もいる。
  • 退職、人間関係、不登校、コロナ禍など、挙がっている項目は多方面にわたる。
  • 最も多い項目でも、2割あまりにとどまる。

最も多い「退職したこと」でも21.5%ですから、残りの約8割の方は、この項目を選んでいません。「ひきこもりの典型的なきっかけ」と呼べる、1つの項目はありません。

お子さんが「理由は自分でもよく分からない」と言うとき、それはごまかしているのではなく、実際にそうなのかもしれません。調査の結果にも、そういう方が一定数含まれています。

年齢の幅で見ると、挙がる項目は変わる

同じ調査には、40歳〜69歳を対象にした調査と、10歳〜14歳を対象にした調査もあります。年代によって、設問の選択肢も、挙がる項目も違います。

40歳〜69歳の広義のひきこもり群(155人)

「退職したこと」が44.5%で最も高く、次いで「新型コロナウイルス感染症が流行したこと」20.6%、「病気」16.8%、「人間関係がうまくいかなかったこと」11.6%、「介護・看護を担うことになったこと」6.5%でした。「特に理由はない」は9.0%、「わからない」は1.3%です。

15歳〜39歳と比べると、学校に関する項目はほとんど挙がっていません(「学校になじめなかったこと」1.9%、そのほかの不登校の項目は0%)。なぜ違いが出るのかは、原文では説明されていないので、ここでは数字の紹介にとどめます。

10歳〜14歳の「外出頻度の低いこども群」(63人)

義務教育年齢のこどもについては、社会的自立に着目した定義を作るのが難しいとして、「外出頻度の低いこども群」という別の定義が使われています。普段の外出が「自分の趣味などの用事のときだけ」「近くのコンビニなどには出かける」「自分の部屋からは出るが、家からは出ない」「自分の部屋からほとんど出ない」のいずれかで、その状態が6か月以上続いている子です。該当者は63人(有効回収数の4.14%)でした。

この63人が問17-1で選んだ理由(複数回答)は、次のとおりです。

選んだ理由 割合
特に理由はない 34.9%
新型コロナウイルスが流行したこと 22.2%
学校にうまくなじめなかったこと 17.5%
まわりの人とのつき合いがうまくいかなかったこと 15.9%
中学生のときの不登校 14.3%
小学生のときの不登校 12.7%
その他 9.5%
病気 6.3%
受験がうまくいかなかったこと 1.6%

「わからない」は7.9%でした。この年代では、「特に理由はない」が最も多い回答でした。回答した人数は63人と少ないため、数字の小さな差を大きく読まないほうがよいと思います。

この数字を読むときの3つの注意

1つめ。「選んだ理由」は、原因が分かったという意味ではない

「人間関係がうまくいかなかった」を選んだ人が20.8%いる、というのは、その人たちが「自分の状態に関係がありそうだ」と感じた項目を選んだ、ということです。人間関係が先にあって、そのあとに外出が減ったのか、外出が減った後に人間関係のことを思い返して選んだのかは、この調査からは分かりません。調査は1回、その時点の回答を集めた形式です。

2つめ。家庭や親の関わり方は、調査の選択肢にない

今回確認した設問の選択肢には、「親の育て方」や「親子関係」にあたる項目はありません(問18-1、問17-1の選択肢は上で紹介したとおりです)。「家族の看病やお世話をすることになったこと」「介護・看護を担うことになったこと」という項目はありますが、これは家族の介護や看護を担う状況のことです。親御さんの関わり方を問うものではありません。なお、「人間関係がうまくいかなかったこと」や「その他」は、誰との関係か、何があったかまでは区切って聞いていません。

「家庭が原因ではないか」と自分を責めている方にとって、この点は知っておいてよいと思います。この調査の数字から、親御さんの責任を読み取ることはできません。

3つめ。数字は、いまの状態にある全員を代表するものではない

広義のひきこもり群の人数は、15歳〜39歳対象で144人、40歳〜69歳対象で155人です。回答者数が多くないため、数字の小さな差を大きく読まないほうがよいと思います。また、本人が回答できた人の集まりなので、回答が難しかった方の声は入っていないかもしれません。報告書にも、定義は同一の基準を一律にあてはめたもので、実際の状態とは異なる場合がある旨が書かれています。

厚生労働省の「ひきこもり支援ハンドブック」にも、ひきこもり状態になったときの年齢、その理由やきっかけは様々で、様態は「百人百様」とも言われる、と書かれています。国の資料も、きっかけを一つの型にまとめられるとは言っていません。

原因が分からなくても、できること

原因が分かれば解決に近づく、と思いたくなります。ただ、きっかけを探すことが、親御さんとお子さんの両方にとって重荷になることがあります。「どうして」と何度も聞かれると、責められているように感じてしまうことがあります。

きっかけが分からないままでも、できることはあります。

  • お子さんが安心して過ごせる時間と場所を、まず守る。
  • 眠れているか、食べられているかなど、体の様子をそっと見守る。
  • 話したくなったときに話せるよう、聞く姿勢を保つ。
  • 親御さん自身が、ひとりで抱え込まない。相談できる場所を1つ知っておく。

厚生労働省は、ひきこもり地域支援センターを都道府県・指定都市に設置しています。本人や家族からの相談を受ける窓口です。きっかけがはっきりしない段階でも、相談できます。支援の具体的な内容は、別の記事で扱います。

今日できる小さな一歩

1つだけで構いません。

  1. 今日は、お子さんに「どうして」と理由を聞くのをお休みする。代わりに、「今日は何が食べたい?」のような、答えやすい声かけを1つ決めておく。
  2. 「何がきっかけだったのか」と自分を責める気持ちが出てきたら、この記事の数字は、本人が選んだ項目の集計であって、親御さんの評価ではないことを思い出す。
  3. お住まいの地域のひきこもり地域支援センターを、厚生労働省のページで調べて、名前と連絡先だけメモしておく。電話をするのは、後でも構いません。

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番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。

  • ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置されています。住所・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
  • 学校・教育委員会・教育支援センター: お子さんが学齢期の場合は、お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせてください。電話番号は自治体ごとに異なるため、市区町村の公式サイトで確認します。
  • 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもしれないと思ったとき、お近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。全国の児童相談所は、こども家庭庁の一覧(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/jisou-ichiran)で確認できます。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

内閣府の令和4年度の調査が数えているのは、ひきこもり状態にある方が、現在の状態になった理由として選んだ項目です。原因を特定したものではありません。退職、人間関係、不登校、コロナ禍など、挙がる項目は多方面にわたり、15歳〜39歳では最も多い項目でも2割あまりです。「特に理由はない」「わからない」を選んだ方もいます。親の関わり方を問う選択肢は、確認した設問にはありません。きっかけを1つに決められなくても、親御さんが悪いということではありません。まずは今日、お子さんが安心して過ごせる時間を1つ守るところから始めてみてください。

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出典

  • こども家庭庁(内閣府調査の掲載ページ)「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」(https://www.cfa.go.jp/resources/research/chilren-attitudes)
  • 内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書 第1部 調査の概要」(令和5年3月)(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/85674a4c-22e0-4483-a7fb-83319b266439/10a07986/20250305-resources-research-chilren-attitudes_02.pdf)
  • 内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書 第3部 調査結果の概要Ⅱ」(令和5年3月)(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/85674a4c-22e0-4483-a7fb-83319b266439/4406b2d0/20250305-resources-research-chilren-attitudes_06.pdf)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~(全体版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」「児童相談所一覧」
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。