「不登校特例校」という言葉を聞いて、調べ始めた方も多いと思います。名前だけでは、どんな学校なのか、うちの子に関係があるのかが分かりにくいものです。
結論から言うと、不登校特例校は、不登校の児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を組める学校として国が指定する制度です。現在は「学びの多様化学校」という名称が使われています。通うかどうかは、お子さんと家族が選ぶ選択肢のひとつにすぎません。この記事では、文部科学省の公式情報で確認できたことだけを整理します。
「不登校特例校」と「学びの多様化学校」は同じ学校です
名称は変わっています。文部科学省は、令和5年(2023年)8月31日に開かれた「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部」(第2回)で、不登校特例校の新しい名称を「学びの多様化学校」に決定しました(文部科学省の報道発表ページによる)。名称を決める際には、不登校特例校に通う児童生徒や教職員から意見を募集した、と同ページに書かれています。
旧称と新称の関係は次のとおりです。
- 旧称: 不登校特例校
- 新称: 学びの多様化学校
文部科学省は、混乱を避けるため当面は「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)」と併記するとしています。実際に、同省の制度ページの題名も「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)」です。検索や自治体の資料では今も両方の名前が出てくるので、同じ制度を指すものとして読んで問題ありません。なお、文部科学省の通知(令和5年8月31日付け)によると、この名称は「指定を受けた学校」という分類の呼び名です。個々の学校の名前ではなく、自治体や設置者に学校名の変更を求めるものでもないため、実際の校名は学校ごとに異なります。
また、同ページには「名称変更に伴い、当該学校の制度や申請手続き等に変更が生じるものではありません」という注意書きがあります。名前が変わっただけで、制度の中身が変わったわけではありません。
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制度の根拠:学校教育法施行規則第56条などに基づく国の指定
学びの多様化学校は、法律で定められた学校(学校教育法第1条に規定される学校)のひとつです。フリースクールのような民間の施設とは、ここが違います。
文部科学省の概要ページによると、制度の根拠は次のとおりです。
- 不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施する必要があると認められる場合に、文部科学大臣が学校を指定します。
- 根拠は学校教育法施行規則第56条です。中学校は第79条、義務教育学校は第79条の6、高等学校は第86条、中等教育学校は第108条で、同じ規定が準用されます。
- 指定された学校は、通常の教育課程の基準によらずに特別の教育課程を編成して教育を実施できます。
制度の始まりについても、文部科学省のページに「平成17年7月から文部科学大臣の指定により行うことが可能となっています」と記載されています。もとは特区(構造改革特別区域)の取り組みとして始まり、平成17年に全国で実施できるようになった経緯が、同省の手引きに書かれています。
つまり「特例校」の「特例」とは、教育課程(何をどの順序・時間で学ぶか)の組み方についての特例のことです。
通常の学校との違い:教育課程の組み立てを工夫できる
では、通常の学校と何が違うのでしょうか。文部科学省の手引き(令和6年2月改定)には、特別の教育課程の例が挙げられています。あくまで一例で、学校ごとに内容は異なります。
- 学習指導要領にない、特色ある教科を新設する。
- 教科の授業時数を組み替える(例: 国語・社会から計80時間を減らし、総合的な学習の時間を80時間増やす)。
- 学習内容の一部を、別の学年に移して学ぶ。
- 総授業時数を減らす、または1単位時間の長さを短くする(例: 50分を45分にする)。
総授業時数や教育内容を減らす場合について、手引きは「原則として好ましくない」としたうえで、不登校の児童生徒の教育環境を守るために必要な特別な事情があるときに認められる、という考え方を示しています。減らした分は、オンライン授業や補習、個別指導などで補う工夫が求められます。具体例として、起立性調節障害のあるお子さんにも通いやすいよう、登校時間を遅らせて1日5時間の授業にする例が挙がっています。
指導の面では、少人数指導や習熟度別指導、家庭訪問や保護者への支援、学校外の学習プログラムの活用などの工夫が「望ましい」とされています(文部科学省の概要ページ)。
ここで押さえておきたいのは、授業時数の減らし方も、特別の教育課程の中身も、学校によって違うことです。「学びの多様化学校ならこうなる」とひとくくりにはできません。気になる学校があれば、その学校の教育課程の説明を直接確認することをおすすめします。
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設置状況:増えてきていますが、まだ限られています
設置状況は、時期によって数字が大きく変わっています。確認できたものを、出典と時点を添えて書きます。次の2つの数字は、時点も数え方も異なるため、そのまま引き算して「増えた数」とは読めません。
- 令和5年(2023年)4月現在: 全国に24校。学校種別は小学校5校、中学校18校、高等学校3校(小中一貫校は小学校と中学校の両方に数えているため、合計は校数と一致しません)。設置者別では公立14校、私立10校(文部科学省「設置に向けて【手引き】」令和6年2月改定)。
- 2026年10月2日に編集部が確認した文部科学省の設置者一覧: 一覧番号は1から84まで付いていました。形態別の行数は、本校型32、分教室型29、分校型12、コース指定型11です。これは一覧の行を編集部が数えた件数で、文部科学省が示した校数ではありません。1つの行に小学校と中学校がまとめて載っている場合や、1つの行に複数の分教室が載っている場合があり、行数と校数は一致しないことがあります。手引きの「学校型」は、一覧では「本校型」と表記されています。最新の状況は、文部科学省の一覧で確認してください。
設置形態は次のように分かれます(手引きによる)。
- 学校型(一覧では本校型): 廃校などの学校設備をそのまま活用する形態。
- 分教室型: 一般の学校を母体に、一部の学級のみを指定する。
- 分校型: 本校とは別に設けられる。
- コース指定型: 高等学校などで、一部のコースを指定する。
設置主体は、市区町村などの教育委員会、国立大学法人、学校法人です(国が申請を受けて指定します)。小学校・中学校・高等学校などに設置されていて、公立も私立もあります。
国は、令和5年6月に閣議決定した教育振興基本計画で、各都道府県・指定都市に1校以上の設置を進めること、将来的には希望する児童生徒が居住地によらずアクセスできるよう、分教室型も含めて全国で300校を目指すことを掲げています。今は、通える範囲に学校がない地域もあります。校名や所在地の一覧は、別の記事で扱います。
入学の仕組み:学校・自治体ごとに違うので、確認が欠かせません
入学のしかたは、ここがいちばん分かりにくい点です。文部科学省の資料で確認できたのは、次のような範囲までです。
- 対象は、不登校状態にある児童生徒、または不登校の傾向が見られる児童生徒などです。不登校かどうかの目安として、文部科学省の調査にある「年間30日以上の欠席」が参考にされますが、判断は学校またはその管理機関(教育委員会など)が行います。断続的な欠席の場合も対象になりうる、と同省のページにあります。
- 入学を希望するお子さんが対象になるかどうかは、当該学校または管理機関が個別に判断します(手引き)。
- 入学前の取り組みとして、体験入学の期間を設ける、在籍校の担任と情報を共有する、保護者と本人の個別面談を行う、といった例が手引きに挙がっています。
- 校区が広くなることもあるため、通学方法や通学路を学校が検討するとされています。通学が遠方になる場合もあります。
一方で、次の点は学校や自治体によって異なり、国の資料からは一律に言えません。
- 住んでいる地域による条件(その市区町村に住んでいることが必要か、など)
- 通学の方法や、通学費・授業料の扱い
- 定員の有無、選考や面談の進め方、受け入れの時期(転入が随時か、年度初めか)
確認の入り口はいくつかあります。今の学校の担任や管理職、スクールカウンセラー、お住まいの市区町村の教育委員会、気になる学校そのものです。電話やメールで「見学や説明会はあるか」「通学のための条件は何か」「いまの在籍校とどう手続きするか」を聞いてみてください。
学びの選択肢のひとつとして位置づける
学びの多様化学校は、「ここに通えば解決する」というものではありません。文部科学省の手引きも、学びの多様化学校は「あくまで学びの場の選択肢の一つ」であり、教育支援センターなどとの連携も重要だと書いています。
お子さんにとっての選択肢は、たとえば次のように並べられます。
- 学びの多様化学校: 国が指定した、特別の教育課程を持つ学校。
- 教育支援センター(適応指導教室): 市区町村の教育委員会が設ける場所。自治体ごとに運営が異なります。
- フリースクールなどの民間の場: 学校とは別の、運営団体ごとに方針が異なる場所(詳しくは別の記事で扱います)。
- 在籍している学校での配慮や、校内の別室などの居場所。
- 家庭を中心とした、ゆっくり休む時間と学び。
どれが上で、どれが下ということはありません。お子さんが安心して過ごせるか、通う負担が大きすぎないか、本人が興味を持てるか。この3つを、お子さんの様子を見ながら家族で話し合う材料にしてもらえればと思います。見学して「合わない」と感じたら、別の選択肢を探して構いません。
今日できる小さな一歩
- 気になる学校がなくても、お住まいの都道府県・市区町村に学びの多様化学校があるかを、文部科学省の設置者一覧(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1387004.htm)で確認してみる。
- 通える範囲になければ、「ない」と分かるだけでも情報です。そのうえで、教育支援センターやフリースクールの情報も、ひとつ見てみる。
- お子さんには、まだ話さなくて構いません。親が先に情報を集めて、あとで「こんな選択肢もあるよ」と伝えられる状態にしておくだけで十分です。
ひとりで抱え込まず、話してみませんか
- 1回30分・無料
- オンライン・電話
- 入力は2分ほど
不登校支援の専門カウンセラーが、お話を伺います。1回30分まで無料です。
※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。
相談窓口
番号・URLは、いずれも公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。
- 学校・市区町村の教育委員会: 学びの多様化学校の入学条件や、教育支援センターの情報は、お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせてください。電話番号は自治体ごとに異なるため、各自治体の公式サイトで確認します。
- 文部科学省「子供のSOSの相談窓口」: 電話やSNSで相談できる窓口の一覧が、次のページにまとまっています。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省): 0120-0-78310(通話無料)。24時間受け付けています。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
- 児童相談所・自治体の子ども・若者の総合相談窓口: 各自治体の公式サイトで確認できます。
- よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。
お子さんが「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。
まとめ
不登校特例校は、令和5年8月に「学びの多様化学校」という名称に決まった、特別の教育課程を組める学校の制度です。根拠は学校教育法施行規則第56条などで、国が学校を指定します。設置は増えていますが、入学の条件や費用、通学のしかたは学校や自治体ごとに違うため、気になる学校があれば、教育委員会や学校に直接確認してください。これは学びの場の選択肢のひとつで、教育支援センターやフリースクールと並べて考えられるものです。ひとりで抱えて疲れたときは、相談窓口を使ってください。
ひとりで抱え込まず、話してみませんか
- 1回30分・無料
- オンライン・電話
- 入力は2分ほど
不登校支援の専門カウンセラーが、お話を伺います。1回30分まで無料です。
※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。
出典
- 文部科学省「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)(不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校)について」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1387008.htm)
- 文部科学省「第2回 誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部を開催 不登校特例校の新名称を「学びの多様化学校」に決定」(https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2023/20230831.html)
- 文部科学省「不登校児童生徒の実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の概要」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1397860.htm)
- 文部科学省「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1387004.htm)
- 文部科学省「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置に向けて【手引き】令和6年2月改定」(https://www.mext.go.jp/content/20240304-mxt_jidou02-000004552_b.pdf)
- 文部科学省「子供のSOSの相談窓口」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm)
- 文部科学省「「不登校特例校」の新たな名称について(通知) 令和5年8月31日付け5初児生第17号」(https://www.mext.go.jp/content/20230905-mxt_jidou02-100002759_a.pdf)
いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。



