「このまま学校に行かない状態が続いたら、ひきこもりになってしまうのだろうか」。そんな不安が頭を離れず、夜になって検索している方は多いと思います。ご自分の関わり方まで振り返って、苦しくなっている方もいるかもしれません。

先に結論を書きます。国の資料には、不登校とひきこもりの両方に触れた記述がいくつかあります。ただし、「不登校だとひきこもりになる」と言える資料は、確認した範囲にありませんでした。確認できたのは、次の3点です。

  • ひきこもり状態にある方のなかに、現在の状態になった理由として過去の不登校を選んだ方が一定数いる(内閣府)
  • 中学校で不登校だった方を5年後まで追った調査では、多くの方が就学か就業の状態にあった(文部科学省)
  • 国は、不登校の時期の支援と、その後の「社会とのつながり」を絶やさないことの両方を課題としている(文部科学省、厚生労働省)

この記事では、それぞれが何を数えた調査なのか、数字からは何が言えて何が言えないのかを、原文に沿って整理します。親御さんの育て方や、お子さんの性格を原因とする話ではありません。また、学校に戻ることを前提にした話でもありません。

不登校の経験、学校以外の居場所、相談、就学や就業などが、人によって異なる順序や組み合わせで並ぶ道筋を表した図。一本道ではなく、複数の道があることを示している"“

国の資料は、不登校とひきこもりの関係をどう書いているか

まず、国が出している資料の書き方を確認します。

厚生労働省の「ひきこもり支援ハンドブック」(令和7年1月公表)には、不登校児童生徒に関する取組を説明した箇所があります。そこでは、内閣府の調査で、外出頻度が低くなった最も大きな理由として小・中・高校時代の不登校を挙げている人が一定数いることに触れたうえで、「不登校が理由となり将来のひきこもりにつながっている場合もあると考えられます」と書かれています。「場合もある」という書き方で、不登校の経験者が一般にそうなるとは書かれていません。

同じハンドブックには、不登校から長くひきこもり状態になった人やその家族は、中途退学や卒業のタイミングで福祉の相談窓口につながることが多い、という記述もあります。ひきこもりの概念そのものが、昭和30年代から注目されるようになった不登校(当時は「学校恐怖症」「登校拒否」などと呼ばれました)に端を発している、という経緯の説明もあります。不登校とひきこもりが、研究や施策の歴史のなかで近い位置にあったことは、国の資料も認めています。

文部科学省の通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」(令和元年10月25日)も見ておきます。この通知には、次のような趣旨が書かれています。

  • 支援は、学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある
  • 不登校の時期が休養や自分を見つめ直すといった積極的な意味を持つことがある一方、学業の遅れや進路選択上の不利益、社会的自立へのリスクが存在することに留意する
  • 中学校時に不登校で、卒業後に進学も就労もしていない人、高校へ進学したものの通えない人、中途退学した人などに対しては、多様な進学や職業訓練の機会などを相談できる窓口や、社会的自立を支援する受け皿が必要。関係機関が連携し、情報提供を行うなど、社会とのつながりを絶やさない対応が必要

通知は、不登校の時期に「リスク」があることを書いています。ただ、その対策として示されているのは、登校を促すことではありません。相談できる窓口と受け皿を用意し、つながりを保つことです。ここは、読み違えたくない点です。

内閣府の調査:ひきこもり状態の方が選んだ「理由」

ひきこもり側から見た数字は、内閣府の「こども・若者の意識と生活に関する調査」(令和4年度)にあります。調査の対象や設問の読み方は、別の記事「ひきこもりのきっかけは?」で扱っています。ここでは不登校に関係する部分に絞ります。

15歳〜39歳を対象にした調査では、「広義のひきこもり群」に該当した方が144人(有効回収数7,035人の2.05%)でした。この144人に、「現在の状態になった主な理由」を複数回答で尋ねた設問(問18-1)があります。不登校に関する項目の割合は、次のとおりです。

選んだ理由(問18-1・複数回答) 割合
中学校時代の不登校 18.1%
高校時代の不登校 9.0%
小学校時代の不登校 4.9%
大学(専門学校、短期大学等を含む)時代の不登校 4.9%

(内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書(令和5年3月)」第3部。割合は広義のひきこもり群144人に対するもの)

同じ設問で、ほかの項目は次のようになっています。

選んだ理由(問18-1・複数回答) 割合
退職したこと 21.5%
人間関係がうまくいかなかったこと 20.8%
新型コロナウイルス感染症が流行したこと 18.1%
学校になじめなかったこと 12.5%
病気 11.8%
特に理由はない 11.8%

最も大きな理由を1つだけ選ぶ設問(問18-2)では、回答数114人のうち「中学校時代の不登校」は9.6%でした。「退職したこと」14.9%、「人間関係がうまくいかなかったこと」14.0%、「新型コロナウイルス感染症が流行したこと」12.3%、「病気」10.5%が、これより多い項目です。

「不登校の経験」と「ひきこもり状態」の2つの円がほんの一部だけ重なっている図。重なる人もいるが、同じものではないことを表している"“

この数字で言えること、言えないこと

言えることは、次のとおりです。

  • 15歳〜39歳の広義のひきこもり群144人のうち、18.1%が「中学校時代の不登校」を、現在の状態になった主な理由のひとつとして選んだ
  • 選ばれた項目は、退職、人間関係、コロナ禍、病気など多方面にわたる。「特に理由はない」を選んだ方も11.8%いる

言えないことは、次のとおりです。

  • 「不登校だった人のうち、何割がひきこもりになるのか」は、この調査からは分かりません。 この数字は「ひきこもり群の人が何を選んだか」の割合です。見る向きが逆なので、不登校経験者を母数にした割合とは別のものです
  • 「不登校がひきこもりの原因だった」とも言えません。「選んだ」のは本人の受け止めで、因果関係を調べた調査ではありません。調査は1回、その時点の回答を集めた形式です
  • 144人という限られた人数の結果を、ひきこもり状態にあるすべての方に当てはめることはできません。数字の小さな差を大きく読まないほうがよいと思います

なお、「小学校時代の不登校」「中学校時代の不登校」「高校時代の不登校」のうち、どれか1つでも選んだ人が全体の何%かは、公表されている集計表の数字だけでは計算できません(複数回答のため、足し算ができないからです)。

40歳〜69歳の広義のひきこもり群(155人)では、学校に関する項目はほとんど挙がっていません(「学校になじめなかったこと」1.9%)。年代によって、挙がる項目は大きく違います。

文部科学省の追跡調査:中学校で不登校だった方の5年後

もう一方の向き、つまり「不登校だった方が、その後どうなったか」を調べた国の調査があります。文部科学省が平成26年(2014年)7月に公表した「不登校に関する実態調査 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~」です。

調査の概要は次のとおりです。

  • 対象は、平成18年度に中学校3年生に在籍し、学校基本調査で不登校として計上された41,043人
  • 学校への基礎調査(A調査)の回答は28,388人
  • 本人への無記名アンケート(B調査)は、平成24年1月〜3月に実施し、回答は1,604人
  • 本人へのインタビュー(C調査)は379人

このうち、中学校卒業から5年後の就学・就業の状況は、本人へのアンケート(B調査)の回答1,604人のうち、就学・就業の設問に有効に答えた1,524人について集計されています。内訳は、次のとおりです。

5年後(調査時点)の状況 割合
就業のみ 34.5%
就学のみ 27.8%
就学・就業 19.6%
非就学・非就業 18.1%

(文部科学省「不登校に関する実態調査」概要版および報告書。割合は有効回答1,524人に対するもの)

報告書は、この結果を整理して、回答者の81.9%が就業あるいは就学していることを示しています。中学校卒業後の高校進学率は85.1%、高校中退率は14.0%でした。

「非就学・非就業」は、ひきこもりのことではありません

ここで注意したい記述があります。報告書は、現在の状況を尋ねる章の冒頭に、これらの設問は就業・就学の有無とその内容を尋ねたもので、回答が「就業も就学もしていない」であったとしても、その状態が「ひきこもり」を意味するものではないことに注意しておく必要がある、と書いています。

「非就学・非就業」の18.1%は、ひきこもりの割合ではありません。進学の準備をしている方、アルバイトを探している方、休んでいる方など、いろいろな状況の方が含まれます。報告書自身が、そう読まないよう断っています。この数字を「不登校の5人に1人はひきこもる」のように読むのは誤りです。

この調査の読み方の注意

  • 対象41,043人のうち、本人のアンケートに回答したのは1,604人です。回答した方は、調査に答えることができた方で、全体を代表しているとは限りません。報告書でも、回答者の大学・短大・高専への就学率は全国平均より低いなど、全国の同年代との比較をしています
  • 調査対象は、平成18年度に中学3年生だった方です。その後、教育支援センター、フリースクール、通信制高校など学びの場の整備も進んでおり、いまの中学生にそのまま当てはまるとは限りません
  • 報告書は、不登校の経験を振り返った方のなかに、「休んだことで今の自分がある」「視野が広がった」などと話す方もいたことを、インタビュー調査の結果として紹介しています。一方で、勉強、友人、進路などでマイナスがあったという意見もあったと書かれています

この調査には、「不登校の子の多くはその後、進学や就労の道に進む」と言い切れるだけの根拠はありません。確認できるのは、「5年後のアンケートに回答した方のうち、有効回答1,524人の約8割が就学か就業の状態にあった」という事実までです。

2つの調査を並べて読む

ここまでの2つの調査は、同じ現象を反対側から見ています。

内閣府の調査(ひきこもり状態の方に過去をたずねる)と、文科省の追跡調査(不登校だった方のその後をたずねる)を左右に並べ、調査が見ている向きが違うことを示した図"“

内閣府(令和4年度) 文部科学省(平成26年公表)
見ている向き ひきこもり状態の方に、理由を尋ねた 中学校で不登校だった方の、5年後を尋ねた
対象 15歳〜39歳の広義のひきこもり群144人 平成18年度の中学3年生で不登校だった方のうち、アンケートに回答した1,604人
分かること ひきこもり群のなかで、過去の不登校を理由に選んだ方の割合 不登校だった方のなかで、5年後に就学・就業などをしていた方の割合
分からないこと 不登校経験者のうち、ひきこもり状態になる割合 「非就学・非就業」の方がひきこもりかどうか(報告書は、そう読まないよう注記)

どちらの調査にも、「不登校になると、ひきこもる」という因果を示す結果はありません。不登校のあと、多くの方が学校や仕事など何らかの場につながっている。一方で、ひきこもり状態にある方のなかには、過去の不登校を理由に挙げる方もいる。国の資料から言えるのは、このくらいの範囲です。不登校とひきこもりは、重なる部分があっても、同じものではありません。

数字を読んだあとに、気をつけておきたいこと

「早く学校に戻さないと」と考えなくてよい

国の通知は、登校という結果のみを目標にしないと書いています。文部科学省は、教育支援センター、不登校特例校、ICTを活用した学習支援、フリースクールなど、さまざまな場を活用した支援を求めています。数字を見て「学校に戻さなければ」と焦る必要はありません。お子さんが安心して過ごせることが、まず大切です。

「つながりを絶やさない」が、国の資料に共通するキーワード

文部科学省の通知も、厚生労働省のハンドブックも、中学校卒業後や中途退学のあとに、進学も就労もしていない状態になる方に向けて、相談できる窓口と、社会とのつながりを保つ対応が必要だと書いています。節目で相談先がなくなると、状況が見えにくくなるためです。今、お子さんが不登校の状態にある場合は、学校外でも相談先を1つ持っておくと、節目のときにも頼れます。

年齢や状況によって、使える窓口が変わる

  • 小・中学生の場合: 学校、お住まいの市区町村の教育委員会、教育支援センター
  • 15歳以降、ひきこもりに近い状態の場合: ひきこもり地域支援センター、市町村のひきこもり支援の窓口、子ども・若者総合相談センター、地域若者サポートステーションなど

窓口の種類と探し方は、別の記事「ひきこもり支援の種類と相談先」に整理しています。

今日できる小さな一歩

1つだけで構いません。

  1. 「このままだとひきこもる」という言葉を、ご自身に向けるのをお休みする。この記事で見たとおり、国の資料にそう断定した記述はありません
  2. お住まいの市区町村の教育委員会や、ひきこもり地域支援センターの名前と連絡先を、メモしておく。電話をするのは、後でも構いません
  3. お子さんには、「学校のこと」を聞く前に、答えやすい声かけを1つ決めておく(「今日は何が食べたい?」など)

ひとりで抱え込まず、話してみませんか

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不登校支援の専門カウンセラーが、お話を伺います。1回30分まで無料です。

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※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。

相談窓口

電話番号は自治体ごとに異なるものが多いため、公式の一覧から探してください。受付時間や対応内容は変更されることがあります。かける前に、各公式ページをご確認ください。

  • 学校・教育委員会・教育支援センター: お子さんが学齢期の場合は、お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせてください。電話番号は、市区町村の公式サイトで確認できます。
  • ひきこもり地域支援センター(都道府県・指定都市): 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から、連絡先一覧(PDF)を確認できます。
  • ひきこもりVOICE STATION: https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp の「全国の相談窓口」。
  • 子ども・若者総合相談センター: こども家庭庁の所在地一覧(https://www.cfa.go.jp/policies/youth/kyougikai-soudancenter)。
  • 精神保健福祉センター・保健所: お住まいの都道府県・指定都市(保健所は市区町村)の公式サイトで、「精神保健福祉センター」「保健所 ひきこもり」と検索してください。
  • 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもしれないと思ったとき、お近くの児童相談所につながります。匿名でも相談でき、通話料は無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

国の資料で確認できたのは、ひきこもり状態にある方の一部が、過去の不登校を理由のひとつに選んでいること(15歳〜39歳の広義のひきこもり群144人のうち、中学校時代の不登校は18.1%)と、中学校で不登校だった方の5年後に、有効回答の約8割が就学か就業の状態にあったことです。どちらの調査も、不登校がひきこもりの原因だとも、不登校だとひきこもりになるとも示していません。対象の人数が限られ、全体に一般化できないことにも注意が必要です。通知やハンドブックが共通して求めているのは、登校ではなく、節目のときにも相談先があり、社会とのつながりが途切れないことです。まずは今日、相談できる場所を1つ知っておくところから始めてみてください。

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出典

  • 文部科学省「「不登校に関する実態調査」~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)」平成26年7月9日(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1349956.htm)
  • 文部科学省「不登校に関する実態調査報告書 第1部 調査の概要・第2部 基礎集計編」「同 第5部 資料編」(同ページに掲載のPDF)
  • 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm)
  • 内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書 第3部 調査結果の概要Ⅱ」(令和5年3月)(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/85674a4c-22e0-4483-a7fb-83319b266439/4406b2d0/20250305-resources-research-chilren-attitudes_06.pdf)
  • こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」(https://www.cfa.go.jp/resources/research/chilren-attitudes)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~(全体版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)

いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。