「8050問題」という言葉をニュースやネットで目にして、胸がざわついた方は多いと思います。お子さんとの暮らしが長くなるほど、自分の年齢のことや、これから先のことが頭から離れなくなる。そういう夜があっても、おかしなことではありません。

先に結論を書きます。「8050問題」は、国の資料のなかで「いわゆる」を付けて使われている言葉です。私たちが原文を確認した範囲では、年齢や人数を決めた国の定義は見つかりませんでした。一方で、内閣府の調査には、40歳以上の方について「現在の状態になってからの期間」や「何歳の頃に始まったか」を聞いた結果があります。この記事では、その数字を原文のとおりに紹介し、数字から言えることと言えないことを分けてお伝えします。人数や割合は、不安をあおるためではなく、状況が一つではないことを確かめるために使います。親御さんの関わり方を問う内容ではありません。

年輪のように、いろいろな色と太さの輪が重なり、始まった時期も続いた長さも人によって違うことを表した水彩の図"“

「8050問題」は国の用語として定義されているのか

まず、言葉そのものについてです。厚生労働省の「ひきこもり支援ハンドブック」(令和7年1月)には、この言葉が出てきます。

ハンドブックは、ひきこもり支援のこれまでの経過を書いた部分で、「いわゆる『8050』問題と言われる、高齢者の親と高齢化した子どものひきこもり支援の必要性が介護保険分野や高齢者福祉分野から発信と問題提起が行われるようになりました」と説明しています。別の箇所でも、「『8050世帯』や、『女性のひきこもり』の顕在化など、本人やその家族が抱える課題が複雑かつ複合化する」と書いています。

また、厚生労働省の資料(「ひきこもり支援施策について」)には、市町村の重層的な支援体制を説明するページがあります。そこでは、課題が「複雑化・複合化」している状態の例として「一つの世帯に複数の課題が存在している状態(8050世帯や、介護と育児のダブルケアなど)」が挙げられています。

この書き方から読み取れるのは、次のことです。

  • 国の資料は、この言葉を「いわゆる」を付けて、世の中で使われている呼び方として紹介している。
  • 「80歳」「50歳」という数字で対象を区切る定義は、確認した資料のなかには書かれていなかった。
  • この言葉に関わる支援の必要性は、介護保険や高齢者福祉の分野から問題提起された、と書かれている。

つまり、「8050問題」は、報道や現場で広く使われている言葉であって、国の調査が「8050の人は何人」と数えたものではない、というのが私たちの確認できた範囲です。確認できなかったことは、「定義がない」と断定する意味ではありません。法令や他の文書に定義がないかどうかまでは、全部は調べきれていません。

同じハンドブックには、支援の対象について「その状態にある期間は問いません」とも書かれています。

内閣府の調査で確認できる、40歳以上の結果

次に、数字です。ここで使う調査は2つあります。

  • 内閣府「生活状況に関する調査(平成30年度)」: 全国の満40歳から64歳の方が対象。報告書は平成31年3月。
  • 内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」: 40歳から69歳の方も対象。令和4年11月に実施。報告書は令和5年3月にまとめられ、現在はこども家庭庁のページで公開されています。

どちらも、「普段どのくらい外出しますか」という質問で、趣味の用事のときだけ外出する、近所のコンビニなどには出かける、自室からは出るが家からは出ない、自室からほとんど出ない、のいずれかを選び、その状態が6か月以上続いている人を「広義のひきこもり群」としています。ただし、身体的な病気を記入した人、家事・育児・介護などを担い家族以外とも会話している人、就労している人などは含まれません。調査の定義は、診断名ではありません。定義の読み方は、別の記事で詳しく扱っています。

該当者の数と割合は、報告書に次のように載っています。

調査 対象 広義のひきこもり群の該当者 有効回収数に占める割合
平成30年度 40〜64歳 47人 1.45%
令和4年度 40〜69歳 155人 2.97%
令和4年度(参考) うち40〜64歳 86人 2.02%

(内閣府「生活状況に関する調査(平成30年度)」「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書(令和5年3月)第3部」。割合は、いずれも回答者数に対するものです)

読むときの注意は3つあります。

  1. 回答者のなかでの割合です。 平成30年度の報告書には、全国の推計数を計算した表もありますが、令和4年度の報告書では、推計人数を確認できませんでした。この記事では、推計人数は使いません。
  2. 2つの調査は、対象の年齢も、質問の項目も違います。 平成30年度は40〜64歳、令和4年度は40〜69歳です。割合を並べて「増えた」「減った」と読むことはできません。厚生労働省の資料にも、過去の調査とは質問項目が一部異なるため単純比較はできない、という留意が書かれています。
  3. 該当者の人数が多くありません。 平成30年度は47人、令和4年度は155人(40〜64歳に絞ると86人)です。小さな差を大きく読まないほうがよい数字です。

もう一点、大事なことがあります。この調査は、回答した本人の年齢を聞いています。親御さんの年齢は、数字の区分に入っていません。そのため、これらの数字から「8050世帯の数」を読み取ることはできません。

「現在の状態になってからの期間」はどうだったか

「長期化」について、調査に聞いた設問があります。「現在の状態となって、どのくらい経ちますか」という質問です。広義のひきこもり群の回答は、次のとおりでした。原文の細かい区分を、編集部で3つにまとめています。

期間 平成30年度(40〜64歳、47人) 令和4年度(40〜69歳、155人)
6か月以上3年未満 27.7% 49.6%
3年以上7年未満 25.6% 27.1%
7年以上 46.7% 23.2%

(編集部が、原表の区分ごとの割合を足し上げたもの。四捨五入のため、合計が全体と一致しない場合があります)

原表では、平成30年度は6か月〜1年未満6.4%、1〜2年未満14.9%、2〜3年未満6.4%、3〜5年未満21.3%、5〜7年未満4.3%、7〜10年未満10.6%、10〜15年未満6.4%、15〜20年未満10.6%、20〜25年未満10.6%、25〜30年未満2.1%、30年以上6.4%です。令和4年度は、1年未満12.9%、1〜2年未満14.8%、2〜3年未満21.9%、3〜5年未満16.1%、5〜7年未満11.0%、7〜10年未満7.7%、10〜15年未満6.5%、15〜20年未満1.3%、20〜25年未満3.2%、25〜30年未満2.6%、30年以上1.9%です。

ここから言えるのは、次のことです。

  • どちらの調査にも、数か月から数年の方も、10年以上の方も含まれている。期間は人によってさまざまである。
  • 2つの調査では、7年以上の割合が違って見える。ただ、対象の年齢も人数も質問の細部も違うため、「長期化が進んだ」とも「和らいだ」とも読めない。

「長期化」は、人数のうえではそうした方が含まれる、という事実です。それが誰かの落ち度を示すものではありません。

何歳の頃に始まったか

もう一つ、「何歳の頃に現在の状態になったか」を聞いた設問があります。「ひきこもりは若いころに始まり、そのまま年を重ねる」というイメージを持っている方もいるかもしれません。調査の数字は、それだけではないことを示しています。

現在の状態になった年齢 平成30年度(初めて現在の状態になった年齢。47人) 令和4年度(現在の状態になった年齢。155人)
39歳以下 38.3% 9.7%
40〜49歳 21.3% 12.3%
50〜59歳 19.1% 18.0%
60歳以上 17.0%(60〜64歳) 45.2%(60〜69歳)
無回答 4.3% 14.8%

(編集部が原表の5歳刻みの割合を足し上げたもの。質問の言い方が2つの調査で少し違うため、並べた比較はしません)

どちらの調査でも、40歳以上になってから現在の状態になったと答えた方が、一定の割合を占めています。若いころから続いている方もいれば、中高年になってから始まった方もいる、ということです。令和4年度の調査では、きっかけとして「退職したこと」を挙げた方の割合が高かった、という結果もあります(別の記事で扱っています)。

ただ、令和4年度の155人の年齢は、65〜69歳が44.5%と最も多くなっています。そのため、60歳以上の割合が大きくなっている面があります。この調査だけで、「年齢が高い人ほど始まりも遅い」と言い切ることはできません。数字を、お子さんのことにそのまま当てはめる必要はありません。

厚生労働省のハンドブックは「長期化」をどう書いているか

「長期化」や「高齢化」について、ハンドブックの記述を確認しました。

  • ひきこもり状態の期間は問わない。「生きづらさを感じている期間(時間)によって、支援の必要性が変わるものではありません」と書かれている。
  • 「ひきこもり支援は長期間に及ぶ場合が多く、『スモールステップ』として、少しずつ進めることになります」とある。
  • 本人がひきこもりの期間が長く、社会生活の経験が不足しているなどの状況を理解していれば、「就職することがゴールである」という安易な提示は起こらないはず、と支援者の心構えを書いている。
  • 本人を人として尊厳ある存在と認めていれば、相談に来た家族に対して、これまでの家族の関わりを責めたり、「本人を連れて来ないと支援できません」と言ったりすることにはならないはず、と書かれている。

厚生労働省の資料に載っている大分県の事例には、「ひきこもり状態にある方の高齢化、長期化の傾向が見られる」という記載もあります。これは、その県の取組の紹介であって、全国の傾向を示したものではありません。

長い時間が過ぎていても、「もう遅い」という書き方は、国の資料には見当たりませんでした。期間が長いことと、支援につながれることは、別の話です。

親御さんの年齢が気になるとき

ハンドブックには、親御さんが高齢になった世帯で、本人が親亡き後のことをどう考えるかについて、支援者向けの記述もあります。そこには、「本人が親亡き後について考える余裕がない場合には、確認することが負担になり状況が悪化してしまう可能性もあるため留意しましょう」と書かれています。

ここで確認できるのは、次の2点です。

  • 本人に考える余裕がないときは、確認すること自体が負担になりうるとされている。
  • このため、先のことを話す場面でも、本人の状態に配慮するよう支援者に求めている。

お金や手続きに関わる具体的な備え(成年後見、相続、年金など)は、この記事では扱いません。一人ひとりの状況で異なるため、公的な窓口で相談するのが確実です。ハンドブックの窓口一覧には、次の機関が載っています。

  • ひきこもり地域支援センター: ひきこもり支援の拠点として、相談支援や居場所づくり、家族会の開催などを行う。
  • 地域包括支援センター: 「高齢者(65歳以上)の生活に関する相談支援」を行う窓口です。
  • 自立相談支援機関: 「生活困窮等、生活全般にわたる困りごとの相談支援」。
  • 社会福祉協議会: 自治体によっては、ひきこもり相談窓口が社会福祉協議会に委託されている場合がある、とハンドブックに書かれています。

「どの窓口にかけたらよいか」が分からなければ、まずひきこもり地域支援センターか、お住まいの市区町村の福祉担当に、状況をそのまま伝えてみてください。親御さんの介護で地域包括支援センターに相談しているなら、そこでお子さんのことを一言伝えてみる、という入り口も考えられます。実際の対応は、自治体によって異なります。

年齢の違う親子が食卓を囲み、そのまわりに地域包括支援センター、自立相談支援機関、ひきこもり地域支援センター、社会福祉協議会の4つの窓口がゆるやかにつながっている図"“

今日できる小さな一歩

1つだけで構いません。

  1. 「8050」という言葉を見て気持ちが重くなったら、画面を閉じる。この言葉は、国の定義ではなく、世の中で使われている呼び方です。
  2. お子さんに、「今日は何が食べたい?」のような、答えやすい声かけを1つする。将来の話は、お子さんの気持ちが落ち着いているときで構いません。
  3. ひきこもり地域支援センターか、市区町村の福祉の窓口の名前と連絡先を、1か所メモしておく。電話は、後でも構いません。

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相談窓口

番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。

  • ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置されています。住所・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
  • 地域包括支援センター・社会福祉協議会・自立相談支援機関: お住まいの市区町村の窓口です。電話番号は自治体ごとに異なるため、市区町村の公式サイトで確認してください。自立相談支援機関の窓口の一覧は、「生活困窮者自立支援情報共有サイト」の相談窓口一覧(https://minna-tunagaru.jp/ichiran/)で確認できます。
  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。

お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。

まとめ

「8050問題」は、国の資料のなかで「いわゆる」を付けて使われている言葉で、年齢や人数を決めた国の定義は、確認した範囲では見つかりませんでした。内閣府の調査には、40歳以上の方の「現在の状態になってからの期間」と「始まった年齢」の結果があり、数か月から数十年まで、また若いころから中高年になってからまで、状況はさまざまでした。調査ごとに対象も人数も違うため、数字を並べて「増えた」「長くなった」と読むことはできません。ハンドブックは、期間にかかわらず支援の必要性は変わらないとし、スモールステップで進めることや、家族を責めないことを書いています。年齢のことが気になるときは、お子さんのペースを大切にしながら、公的な窓口に状況を話してみてください。親御さんが一人で抱える必要はありません。

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出典

  • 内閣府「生活状況に関する調査(平成30年度)」平成31年3月(https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/life/h30/pdf-index.html)の「Ⅱ 定義」「Ⅲ 調査の結果」「Ⅳ 集計表」。2026年10月2日時点で、内閣府サイト上のこのページには到達できませんでした。平成30年度の数値は、Internet Archive(2023年9月24日時点)に保存された同報告書の複製で確認しています。割合1.45%は、厚生労働省「ひきこもり支援施策について」の記載とも一致します
  • こども家庭庁(内閣府調査の掲載ページ)「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」(https://www.cfa.go.jp/resources/research/chilren-attitudes)
  • 内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書 第3部 調査結果の概要Ⅱ」(令和5年3月)(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/85674a4c-22e0-4483-a7fb-83319b266439/4406b2d0/20250305-resources-research-chilren-attitudes_06.pdf)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~(全体版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf)
  • 厚生労働省 社会・援護局 地域福祉課「ひきこもり支援施策について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/001099862.pdf)
  • 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
  • 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)

平成30年度の調査を除き、2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。