「うちの子のような状態の人は、どのくらいいるのだろう」。周りに同じ経験をした人が見当たらず、夜中に「引きこもり 人数」と検索された方もいると思います。大きな数字を見て、ほっとする方もいれば、かえって落ち着かなくなる方もいるでしょう。
先に結論を書きます。国の調査で確認できるのは、「ある調査の回答者のうち、国が決めた基準に当てはまった人の割合」です。日本全体の人数を、ひとつの数字で言い切ったものではありません。調査ごとに年齢の範囲も定義も違うため、数字を足したり、並べて増減を語ったりすることもできません。この記事では、内閣府の令和4年度の調査について、報告書の原文で確認できた数字と、確認できなかったことを分けてお伝えします。数字は、お子さんを分類するためのものではありません。
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どの調査の数字か
ここで取り上げるのは、内閣府が令和4年(2022年)11月に実施した「こども・若者の意識と生活に関する調査」です。報告書は令和5年3月にまとめられ、現在はこども家庭庁のページで公開されています。調査の概要は次のとおりです。
- 対象は、令和4年4月1日現在で10歳〜39歳の男女20,000人と、40歳〜69歳の男女10,000人です。全国から層化二段無作為抽出法で選ばれています。
- 郵送で調査票を送り、オンラインでも回答できる方法でした。調査期間は令和4年11月10日〜25日です。
- 有効回収数は、10歳〜14歳が1,520人(有効回収率54.0%)、15歳〜39歳が7,035人(同40.9%)、40歳〜69歳が5,214人(同52.1%)です。
つまり、回答してくれた約1万4千人のなかでの割合を見ている調査です。回答しなかった方、回答できなかった方の状況は含まれていません。
「広義」「狭義」「準ひきこもり」の区分
この調査は、「普段どのくらい外出しますか」という質問で、次の4つのいずれかを選び、その状態が6か月以上続いている人を「広義のひきこもり群」としています。ただし、病名として統合失調症や身体的な病気を記入した人、家事・育児・介護などを担っていて家族以外とも会話している人、就労している人などは含まれません。定義の詳しい読み方は別の記事で扱っていますので、ここでは区分の名前と数字の対応だけを示します。
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報告書では、「近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からほとんど出ない」を選んだ人を「狭義のひきこもり」、「趣味の用事のときだけ外出する」を選んだ人を「準ひきこもり」とし、この2つを合わせたものが広義、と整理されています。
確認できた数字
報告書(第3部 第2章)に載っている、広義のひきこもり群の該当者数と、有効回収数に占める割合は次のとおりです。
| 調査の対象 | 該当者数 | 有効回収数に占める割合 |
|---|---|---|
| 15歳〜39歳対象調査 | 144人 | 2.05% |
| 40歳〜69歳対象調査 | 155人 | 2.97% |
| (参考)40歳〜69歳のうち40〜64歳 | 86人 | 2.02% |
| 10歳〜14歳の「外出頻度の低いこども群」 | 63人 | 4.14% |
(内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書 第3部」令和5年3月。10歳〜14歳は後で説明する別の定義です)
外出の状況ごとの内訳も、報告書にあります。
| 外出の状況(選んだ項目) | 15歳〜39歳 | 40歳〜69歳 |
|---|---|---|
| 趣味の用事のときだけ外出する(準ひきこもり) | 67人(0.95%) | 64人(1.23%) |
| 近所のコンビニなどには出かける(狭義) | 52人(0.74%) | 81人(1.55%) |
| 自室からは出るが、家からは出ない(狭義) | 21人(0.30%) | 4人(0.08%) |
| 自室からほとんど出ない(狭義) | 4人(0.06%) | 6人(0.12%) |
割合は、いずれも有効回収数に占めるものです。広義の出現率の標本誤差(信頼度95%)は、15歳〜39歳対象調査が±0.47%、40歳〜69歳対象調査が±0.65%と、報告書の注に書かれています。たとえば2.05%という数字は、調査に回答した人の集まりで見たときの値で、そこから前後に幅をもって読むものです。
報告書の注には、この定義は同一の基準を一律にあてはめた結果であり、実際にはひきこもりの状態にない人が含まれたり、状態にある人が除かれたりする可能性がある、とも書かれています。
10歳〜14歳は別の定義
義務教育年齢のこどもについては、社会的自立に着目した定義をつくることが難しいため、「外出頻度の低いこども群」という別の区分が使われています。外出の4つの項目のいずれかで、その状態が6か月以上続いている子が該当し、63人(有効回収数の4.14%)でした。この区分は「ひきこもり」とは別の名前の、外出の頻度に着目した区分です。15歳以上の割合と並べて、「年齢が下がると増える」などと読むことはできません。
「推計人数」は報告書に載っていたか
ニュースなどで「推計146万人」という数字を目にした方もいると思います。今回、報告書(第1部、第3部)を原文で確認した範囲では、広義のひきこもり群の「推計人数」は見つかりませんでした。載っていたのは、上の表にある該当者数と、有効回収数に占める割合(出現率)です。
厚生労働省の資料は、この調査について次のように紹介しています。
- 「ひきこもり支援ハンドブック」(全体版)は、令和4年度の調査結果として、15歳〜39歳で2.05%、40歳〜64歳で2.02%と示し、「いずれの年代においても約50人に一人の割合(推計数は算出せず)」と書いています。
- 同じ厚生労働省の別の資料(「ひきこもり支援施策について」)には、「推計146万人を発表(50人に一人)」と書かれた年表があります。
厚生労働省の資料どうしで、推計数の扱いが異なっています。私たちは、内閣府の公表資料の原文で146万人という数字を確認できなかったため、この記事では人数としては使いません。「約50人に一人」という言い方は、2.05%や2.02%を言い換えたもので、この調査の回答者のなかでの割合を表しています。日本の全員を数えた結果ではありません。
過去の調査と比べてよいか
内閣府は、以前にも別の調査を行っています。厚生労働省の資料には、平成27年度「若者の生活に関する調査」(15歳〜39歳、有効回答3,115人)で出現率1.57%・推計54.1万人、平成30年度「生活状況に関する調査」(40歳〜64歳、有効回答3,248人)で出現率1.45%・推計61.3万人、と掲載されています。
ただし、同じ資料に、過去の調査とは質問項目が一部異なるため単純比較はできないことに留意する、と明記されています。調査の名前、対象の年齢、標本の数、質問の内容がそれぞれ違うからです。ですから、「前より増えた」「減った」と読むことも、この記事ではしません。令和4年度の数字の背景についても、報告書は理由を説明していません。
令和5年度以降の調査には、人数や割合があるか
こども家庭庁のページを確認すると、令和7年度に「こども・若者総合調査」が公表されています(令和8年4月公表)。私たちが確認したところ、結果の概要と報告書の各章、調査票には、令和4年度調査のような「広義のひきこもり群」の定義や割合は見つかりませんでした。調査票に、ひきこもり地域支援センターを含む相談機関の利用に関する選択肢があるのを確認した程度です。令和5年度・令和6年度に同様の推計があるかどうかも、今回は確認できていません。確認できなかったことは、「ない」という意味ではありません。最新の状況は、こども家庭庁と内閣府の公式ページでご確認ください。
数字の読み方、3つの注意
- 回答者のなかでの割合です。 全国の人数を数えたものではありません。
- 調査ごとに定義が違います。 年齢の範囲、外出の質問、除外の条件が異なるため、数字を足したり、並べて比べたりできません。
- 一人ひとりの状況は数字から読み取れません。 厚生労働省のハンドブックには、ひきこもり状態になったときの年齢、その理由やきっかけは様々で、様態は「百人百様」とも言われる、と書かれています。同じ外出の項目を選んでいても、背景も思いも違います。
また、この数字だけで、支援が必要かどうか、相談したほうがよいかどうかは決まりません。人数が多くても少なくても、お子さんとご家族の状況は、ご家族のなかで見ていくものです。
今日できる小さな一歩
1つだけで構いません。
- 「何人くらいいるのか」を調べて気持ちが落ち着かなくなったら、いったん画面を閉じる。数字を見るのは、また今度でよい。
- お子さんの様子をそっと見て、「今日、眠れていたか」「食べられていたか」を1つだけ心にとどめる。
- ひきこもり地域支援センターの名前と連絡先を、厚生労働省のページで調べてメモしておく。電話は、後でも構いません。
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※医師・公認心理師などの資格を持つ専門家ではありません。診断・治療などの医療的な助言は行いません。緊急のときは、記事内の「相談窓口」へご連絡ください。
相談窓口
番号・名称は、いずれも運営機関の公式ページで確認した内容です。受付時間や対応内容は変更されることがあるため、かける前に各公式ページをご確認ください。
- ひきこもり地域支援センター: 各都道府県・指定都市に設置されています。住所・連絡先は厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)から確認できます。
- 学校・教育委員会・教育支援センター: お子さんが学齢期の場合は、お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせてください。電話番号は自治体ごとに異なるため、市区町村の公式サイトで確認します。
- 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」: 虐待かもしれないと思ったとき、お近くの児童相談所につながります。匿名可、通話料無料です(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)。
- よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター): 0120-279-338(フリーダイヤル)。電話のほか、チャットやSNSでの相談にも対応しています。受付時間は公式サイト(https://www.since2011.net/yorisoi/)で確認してください。
お子さんや親御さん自身が「死にたい」と口にしている、自分や他人を傷つけるおそれがある、命や安全に関わる状況だと感じる場合は、上の窓口を待たずに、まず110番または119番に連絡してください。
まとめ
内閣府の令和4年度の調査では、広義のひきこもり群は、15歳〜39歳対象で有効回収数の2.05%(144人)、40歳〜69歳対象で2.97%(155人)でした。ただし、これは回答者のなかでの割合で、報告書に推計人数は載っていませんでした。調査ごとに年齢の範囲も定義も違うため、足したり比べたりはできません。数字は、お子さんを測るものさしではなく、その子の状況は一人ひとり違います。人数を知って落ち着かないときは、数字から離れて、今日のお子さんの様子とご自身の休息を先に考えてください。
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出典
- こども家庭庁(内閣府調査の掲載ページ)「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」(https://www.cfa.go.jp/resources/research/chilren-attitudes)
- 内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書 第1部 調査の概要」(令和5年3月)(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/85674a4c-22e0-4483-a7fb-83319b266439/10a07986/20250305-resources-research-chilren-attitudes_02.pdf)
- 内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 報告書 第3部 調査結果の概要Ⅱ」(令和5年3月)(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/85674a4c-22e0-4483-a7fb-83319b266439/4406b2d0/20250305-resources-research-chilren-attitudes_06.pdf)
- 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~(全体版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf)
- 厚生労働省 社会・援護局 地域福祉課「ひきこもり支援施策について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/001099862.pdf)
- こども家庭庁「こども・若者総合調査(令和7年度)」(https://www.cfa.go.jp/resources/research/kowaka/results)
- 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)
- こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」(https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/gyakutai-taiou-dial)
- 一般社団法人社会的包摂サポートセンター「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)
いずれも2026年10月2日に確認しました。この記事は公的情報をもとに編集部が作成したもので、専門家の監修は受けていません。



